
手のしびれや指の動かしにくさに悩んでいる透析患者さんは少なくありません。
特に「親指・人差し指・中指がしびれる」「夜中に手が痛くて目が覚める」「細かい作業がしづらい」といった症状は、手根管症候群の可能性があります。
実際に透析患者さんでは一般の方と比べて手根管症候群の発症率が高いことが知られています。しかし、「まずは注射で様子をみましょう」と言われて長期間症状が続いている方も少なくありません。
今回は2024年に発表された大規模研究をもとに、透析患者さんの手根管症候群治療について解説します。

手根管症候群とは?
手根管症候群とは、手首にある「手根管」というトンネルの中で正中神経が圧迫される病気です。
代表的な症状は、
・親指から薬指のしびれ
・夜間痛
・物をつまみにくい
・ボタンをかけにくい
・握力低下
・母指球筋の萎縮
などです。
症状が進行すると神経障害が回復しにくくなるため、適切な時期の診断と治療が重要です。
当院では運動器エコーを用いて神経の腫れや圧迫状態をリアルタイムに確認しながら診断を行っています。
詳しくは https://hasegawaseikei.com/ をご覧ください。
透析患者さんに手根管症候群が多い理由
透析患者さんでは長期間の透析に伴い、β2ミクログロブリンという蛋白が体内に蓄積し、アミロイドとして手根管内に沈着することがあります。
このアミロイドが腱や滑膜、神経周囲に蓄積することで正中神経が圧迫され、手根管症候群を引き起こします。
さらに透析患者さんでは、
・腱鞘炎
・ばね指
・手指関節痛
・手関節痛
・透析アミロイドーシス
なども高率に合併します。
そのため手の症状を単なる加齢や透析の影響と考えて放置してしまうケースも少なくありません。
140万人以上を対象にした大規模研究とは?
今回紹介する研究では、韓国全国データベースを用いて2010年から2019年までに新たに手根管症候群と診断された144万9284人を解析しています。
研究の目的は、
「どのような患者さんが注射治療を受けやすいのか」
「どのような患者さんが最終的に手術を受けるのか」
を明らかにすることでした。
解析された危険因子には、
・糖尿病
・関節リウマチ
・甲状腺機能低下症
・痛風
・透析中の慢性腎不全
・橈骨遠位端骨折の既往
などが含まれています。
透析患者さんは手術を選択される確率が4倍だった
この研究で最も注目すべき結果は、
透析患者さんは手根管症候群に対して手術を受ける可能性が約4倍高かった
という点です。
手術選択との関連を示すオッズ比は4.001であり、解析された全ての基礎疾患の中で最も強い関連を示しました。
研究者らは、
・透析アミロイドの沈着
・腱や滑膜の肥厚
・神経周囲組織の変化
などによって保存治療だけでは改善しにくい病態が背景にあると考察しています。
つまり透析患者さんでは、一般的な手根管症候群とは異なり、神経圧迫の原因そのものが強いため、根本的な除圧が必要になるケースが多いのです。
注射だけでは改善しないケースが少なくない
手根管症候群に対するステロイド注射は有効な治療法です。
しかし過去の研究では、注射治療後に最終的に症状が再発あるいは改善せず、追加治療が必要となる割合が67%に達するという報告もあります。
特に透析患者さんでは、
「何度も注射を受けているが改善しない」
という状況に陥ることがあります。
しびれが進行し、
・箸が使いにくい
・ボタンが留めにくい
・透析中に手が痛い
・握力が低下した
という状態になってから受診される患者さんも珍しくありません。
透析患者さんのばね指にも注意
透析患者さんでは手根管症候群だけでなく、ばね指も非常に多くみられます。
指の曲げ伸ばしで引っ掛かりを感じたり、朝に指が固まったりする症状が特徴です。
透析アミロイドの沈着は腱鞘にも生じるため、
・手根管症候群
・ばね指
を同時に発症する患者さんも少なくありません。
「しびれだけだと思っていたら、実はばね指も合併していた」
というケースは日常診療で頻繁に経験します。
透析患者さんの手の症状は専門医への相談が重要
透析患者さんの手の症状は、
・手根管症候群
・ばね指
・透析アミロイドーシス
・尺骨神経障害
・変形性関節症
・腱断裂
など複数の病態が重なっていることがあります。
そのため単純なレントゲン検査だけでは診断が難しいこともあります。
当院では運動器エコーを活用しながら、神経・腱・関節を総合的に評価しています。
また必要に応じて、
・超音波ガイド下注射
・ばね指治療
・手根管症候群手術
・高次医療機関との連携
まで一貫して対応しています。
大学病院で多数の透析患者さんを診療してきた手外科専門医が対応します
はせがわ整形外科運動器エコークリニックの院長は、大学病院勤務時代から多数の透析患者さんの手のトラブルを診療してきました。
透析患者さんでは一般的な整形外科疾患とは異なる病態を示すことが多く、
・長年続く手のしびれ
・透析シャント側の手の症状
・繰り返すばね指
など専門的な評価が必要になることがあります。
「透析をしているから仕方ない」
と諦める必要はありません。
適切な診断と治療によって症状が大きく改善する可能性があります。

まとめ
2024年に発表された144万人以上を対象とした大規模研究では、透析患者さんは手根管症候群に対して手術が選択される可能性が約4倍高いことが示されました。
これは透析患者さんの手根管症候群が、保存治療だけでは改善しにくい特徴を持つことを示唆しています。
透析中の方で、
・手のしびれが続いている
・夜間痛がある
・ばね指を繰り返している
・握力が低下している
という症状がある場合は、一度専門的な評価を受けることをおすすめします。
はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、手外科専門医が透析患者さんのあらゆる手の症状に対応しております。
詳しくは https://hasegawaseikei.com/ をご覧ください。早期診断・早期治療が、手の機能を守る第一歩です。











