肘の外側が痛む「テニス肘(上腕骨外側上顆炎)」や、肘の内側が痛む「ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)」は、40〜50代を中心に多くみられる疾患です。
日常生活やスポーツだけでなく、パソコン作業や家事、力仕事などでも発症し、慢性的な痛みに悩まされる患者さんが少なくありません。
従来は安静やリハビリテーション、ステロイド注射などが行われてきましたが、なかなか改善しない難治例も存在します。
近年、そのような慢性的な肘の腱障害に対して注目されているのがPRP療法(多血小板血漿療法)とTenex(経皮的超音波ガイド下腱切除術)です。
今回は、米国エモリー大学から報告された「PRPとTenexを直接比較した論文」をもとに、それぞれの治療効果について詳しく解説します。

テニス肘・ゴルフ肘は炎症ではなく「腱の変性」が本質
以前はテニス肘やゴルフ肘は炎症による疾患と考えられていました。
しかし現在では、慢性的な負荷によって腱組織が傷み、変性した状態であることがわかっています。
つまり、
・腱の微細断裂
・変性したコラーゲン線維
・血流低下
・修復能力の低下
が主な病態です。
そのため単純な消炎治療だけでは根本的な改善が得られないケースがあります。
このような背景から、組織修復を促進するPRPや、変性組織を除去するTenexが注目されています。
PRP療法とは?
PRP療法は患者さん自身の血液を採取し、高濃度の血小板を抽出して患部へ注射する再生医療です。
血小板には、
・PDGF
・TGF-β
・VEGF
・IGF
などの成長因子が豊富に含まれています。
これらが傷んだ腱組織の修復を促進し、自然治癒力を高めると考えられています。
自分自身の血液を利用するためアレルギーや拒絶反応のリスクが極めて低いことも大きな特徴です。
当院でもPRP治療を多数実施しており、テニス肘やゴルフ肘だけでなく、膝関節症、ばね指、母指CM関節症など幅広い疾患に応用しています。
詳しくは
をご覧ください。
Tenexとは?
Tenexは超音波エコーを見ながら行う低侵襲治療です。
特殊なデバイスから発生する超音波エネルギーを利用して、
変性した腱組織だけをピンポイントで除去する治療法
です。
切開は数ミリ程度で済み、
・日帰り治療
・局所麻酔
・短時間で終了
という特徴があります。
変性組織を除去することで新たな治癒反応を誘導し、正常な腱への再構築を促します。
欧米では慢性腱障害に対する低侵襲治療として広く普及しています。
今回の研究内容
この研究では保存療法で改善しなかった慢性のテニス肘・ゴルフ肘患者62名を対象に、
・PRP群 32例
・Tenex群 30例
を比較しました。
対象患者は全員、
・3か月以上の保存療法
・リハビリテーション
・活動制限
・ステロイド注射など
で十分な改善が得られなかった患者です。
評価項目として
・疼痛スコア(VAS)
・QuickDASH
・QOL評価(EQ-5D)
が用いられました。
結果① PRPもTenexも高い治療効果を示した
研究結果では、
PRP群・Tenex群ともに痛み、機能、生活の質が有意に改善しました。
QuickDASHは
PRP群
30.0 → 9.4
Tenex群
35.9 → 12.5
まで改善しました。
また痛みを示すVASスコアも、
PRP群
4.2 → 2.3
Tenex群
5.5 → 2.2
へ改善しています。
患者満足度も、
PRP群 79.3%
Tenex群 80.0%
とほぼ同等でした。
結果② PRPとTenexに優劣はなかった
本研究の最も重要な結論は、
PRPとTenexの間に統計学的な有意差は認められなかった
という点です。
つまり、
・PRPが明らかに優れているわけではない
・Tenexが明らかに優れているわけでもない
という結果でした。
どちらも難治性テニス肘・ゴルフ肘に対して有効な選択肢であることが示されています。
PRPとTenexはどう使い分けるべきか?
実臨床では単純に優劣で選ぶのではなく、
患者さんの病態に応じて選択することが重要です。
PRPが向いているケース
・腱変性が比較的軽度
・組織修復を促したい
・手術を避けたい
・再生医療を希望する
Tenexが向いているケース
・エコーで高度な腱変性がある
・石灰化を伴う
・長期間改善しない
・変性組織を物理的に除去したい
という傾向があります。
実際にはエコー診断を行いながら病態を評価することで、より適切な治療選択が可能になります。
PRPもTenexも受けられるクリニックは少ない
全国的にみると、
PRPのみ行っている施設
Tenexのみ行っている施設
はありますが、
両方の治療法を提供し、病態に応じて選択できる施設は決して多くありません。
どちらか一方しか選択肢がない場合、本来Tenexが適している患者さんにPRPを行ったり、逆にPRPで十分改善が期待できる患者さんにTenexを行ったりする可能性があります。
そのため、
診断から治療選択まで一貫して行える医療機関を選ぶことが重要です。
はせがわ整形外科運動器エコークリニックで治療を受けるメリット
当院では手外科専門医が診察を担当しています。
さらに運動器エコーを活用し、
・腱の変性
・部分断裂
・石灰化
・炎症の有無
をリアルタイムで評価しています。
そのうえで、
PRPによる再生医療
Tenexによる低侵襲治療
の両方を提供しています。
患者さん一人ひとりの病態に合わせて最適な治療法をご提案できることが当院の大きな強みです。
また、
・日帰り治療
・エコーガイド下で安全性に配慮
・豊富な症例経験
・専門医による継続フォロー
という体制を整えています。
自費診療に不安を感じる患者さんも少なくありませんが、当院では十分な説明を行い、納得いただいたうえで治療を受けていただいております。
PRPとTenexの両方を選択できることは、患者さんにとって大きなメリットです。
治療法を限定せず、その方に最も適した方法を提案できるからです。
まとめ
今回の論文では、
PRPとTenexはいずれも難治性テニス肘・ゴルフ肘に対して高い有効性を示し、両者に明確な優劣は認められませんでした。
重要なのは、
「PRPかTenexか」
ではなく、
「患者さんの病態に最も適した治療を選択すること」
です。
慢性的な肘の痛みでお悩みの方、他院で改善しなかった方は、ぜひ一度ご相談ください。
はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、手外科専門医が運動器エコーを用いて詳細に評価し、PRP再生医療とTenexの両方を活用した専門治療を提供しています。











