手や指のケガ、あるいは手指の変形性関節症など、手の症状でお悩みの方の中には「レントゲンでは異常が見つからないのに痛みが続く」という経験をお持ちの方も少なくありません。近年、こうした手・指の障害の診断において、超音波検査(エコー検査)が非常に有用な画像診断ツールとして注目を集めています。

 

今回は、2025年に発表された手の外傷に関する超音波検査の精度を検証した研究、および手指変形性関節症における超音波所見と炎症マーカーの関連を検討したシステマティックレビューをもとに、手・整形外科領域における超音波検査の意義について解説します。はせがわ整形外科運動器エコークリニック(https://hasegawaseikei.com)では、こうした最新の知見を踏まえた運動器エコー診療を行っております。

 

手の外傷における超音波検査の役割

手や指のケガでは、腱の断裂や剥離骨折、神経損傷など多岐にわたる病態が生じます。これらは触診だけでは判断が難しく、レントゲンでは骨折以外の軟部組織の損傷を評価することができません。

 

今回紹介する研究では、2022年から2024年にかけて手の外傷を負い、手術を受けた47名の患者を対象に、術前に行われた高周波超音波検査の診断精度を、実際の手術所見と比較検証しています。超音波検査は非侵襲的でありながら、リアルタイムに軟部組織の状態を観察できる点が大きな特長です。

 

 

 

腱損傷・剥離骨折に対する診断精度の高さ

この研究結果によると、高周波超音波検査は屈筋腱断裂において92.86%、伸筋腱断裂においては100%という非常に高い診断精度を示しました。また、剥離骨折についても100%の精度で診断できたと報告されています。

 

一方で、腱の部分損傷(腱の一部断裂)や神経損傷については、それぞれ33.33%、40%と精度がやや低下する結果となりました。完全断裂や骨折については超音波検査が極めて有効である一方、部分損傷や神経損傷の評価にはより慎重な観察と経験が求められることが示唆されています。

 

Avulsion fracture with ET injury in distal interphalangeal (DIP) joint.

 

 

動的検査(用手的他動運動)を組み合わせる重要性

この研究でもう一つ注目すべき点は、超音波検査中に指を他動的に動かしながら観察する「動的検査」を組み合わせることで、腱損傷の診断精度がさらに向上したという報告です。

 

静止画だけでは判別しづらい腱の滑走異常や連続性の乱れも、実際に関節を動かしながら観察することで発見しやすくなります。この動的観察こそが、超音波検査がレントゲンやCTにはない大きな利点といえます。

 

関節や腱の動きをリアルタイムで観察できることは、手の外傷だけでなく、肩や膝など全身の運動器疾患の診療においても共通する超音波検査の強みです。はせがわ整形外科運動器エコークリニック(https://hasegawaseikei.com)では、こうした動的評価を重視した診察を行っています。

 

 

 

手指変形性関節症(OA)と超音波所見・炎症マーカーの関連

もう一つ紹介したいのが、手指の変形性関節症(OA)における超音波所見と血液中の炎症マーカーとの関連を検討したシステマティックレビューです。

 

5,000件以上の文献から質の高い4件の研究を抽出して解析した結果、びらん型(erosive)の手指OAにおいては、超音波で確認される滑膜炎(グレースケール滑膜炎)の所見と、血液中の炎症性サイトカインとの間に有意な相関関係があることが示されました。一方で、パワードプラ信号や骨棘、関節液貯留、軟骨の厚みといった他の超音波所見については、明確な相関は認められませんでした。

 

この結果は、手指OAの中でも炎症性の要素が強いタイプを超音波検査によって見極められる可能性を示すものであり、単なる画像診断にとどまらず、病態の背景にある炎症の程度を推測する手がかりとして超音波検査を活用できることを意味しています。

 

手指の変形性関節症は加齢とともに多くの方に見られる疾患ですが、痛みや腫れが強い場合には、こうした超音波評価が治療方針の判断材料になります。

 

 

 

はせがわ整形外科運動器エコークリニックにおける超音波検査

ご紹介した2つの研究からもわかるように、超音波検査は手や指の外傷から変形性関節症まで幅広い病態の評価に役立つ検査です。

 

被ばくがなく、繰り返し行える上に、その場で動きを確認しながら診断できる点は、他の画像検査にはない大きな特長です。手や指の痛み、腫れ、変形、しびれなどでお悩みの方は、レントゲンだけでは分からない軟部組織の状態を評価するためにも、超音波検査を活用した診療をご検討ください。

 

はせがわ整形外科運動器エコークリニック(https://hasegawaseikei.com)では、手・指はもちろん肩・膝・足など全身の運動器に対して、超音波を用いた丁寧な診察を行っております。気になる症状がある方は、ぜひ一度はせがわ整形外科運動器エコークリニックのホームページ(https://hasegawaseikei.com)をご覧ください。

 

 

 

まとめ

今回ご紹介した研究では、手の外傷における高周波超音波検査が腱断裂や剥離骨折の診断において非常に高い精度を示すこと、そして動的検査を組み合わせることでその精度がさらに向上することが明らかになりました。また、手指変形性関節症においては、超音波所見が炎症の程度を反映する可能性が示されており、超音波検査は手・整形外科領域における診断の質を高める重要なツールであるといえます。

 

手や指の症状でお困りの際は、専門的な超音波診療を行う医療機関への相談をおすすめします。はせがわ整形外科運動器エコークリニック(https://hasegawaseikei.com)では、最新の知見に基づいた運動器エコー診療をご提供しておりますので、お気軽にご相談ください。

参考文献

  1. Wang J, Gao L, Fang M, Jiang F, Peng M. Accuracy of high-frequency musculoskeletal ultrasound in hand trauma: a retrospective surgical field-based validation study at a single center. PeerJ. 2025 Dec 15;13:e20514. doi: 10.7717/peerj.20514.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41424714/
  2. Alshalawi O, Fulford J, Al-shaari H, Kemp MC, Obotiba AD. A systematic review of the association between ultrasound-detected features and laboratory inflammatory biomarkers in hand osteoarthritis. Annals of Medicine. 2025 Aug 20. doi: 10.1080/07853890.2025.2549523.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC12372511/

 

【執筆者】
はせがわ整形外科運動器エコークリニック
院長 長谷川 英雄

奈良県立医科大学医学部卒業。日本整形外科学会専門医・日本手外科学会専門医(医学博士)。手外科・運動器エコー診療を専門とし、国内外で研究・教育活動にも従事。チェンマイ大学医学部(タイ)派遣研究員、サン・ロッククリニック(フランス)留学、IRCAD台湾・IRCADストラスブール招聘講師を歴任。日本整形外科超音波学会評議員、Journal of Orthopaedic ScienceおよびJournal of Medicine and Urban Health査読委員など。