手や指のしびれ、特に親指から薬指にかけてのしびれが続いている方はいらっしゃいませんか。夜中や明け方に手のしびれで目が覚める、細かい作業がしづらいといった症状は、「手根管症候群」という病気のサインであることがあります。

 

手根管症候群は、女性や高齢の方に特に多くみられる病気で、決して珍しいものではありません。今回は、2025年に発表された、手根管症候群の診断方法を比較した研究をもとに、どのような検査で診断が行われるのか、わかりやすく解説します。

 

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手根管症候群とはどんな病気か

手首の手のひら側には「手根管」と呼ばれるトンネルのような部分があり、その中を正中神経という神経が通っています。この神経が何らかの理由で圧迫されると、親指・人差し指・中指・薬指の一部にしびれや痛みが生じ、進行すると親指の付け根の筋肉がやせて力が入りにくくなることもあります。

 

加齢のほか、妊娠、糖尿病、肥満、手をよく使う仕事や作業なども発症に関わることが知られており、原因がはっきりしないまま起こることもあります。

 

 

 

手根管症候群の診断にはどんな検査があるのか

手根管症候群の診断には、主に「神経伝導検査(NCS)」と「超音波検査(エコー)」の2つの方法が使われます。神経伝導検査は、神経に軽い電気刺激を与えて伝わる速さを測る検査で、長年「診断のゴールドスタンダード」とされてきました。

 

一方、超音波検査は、手根管の中を通る正中神経の太さや形をリアルタイムに画像で確認できる検査です。2025年に発表された、これら2つの検査方法を比較した18件の研究をまとめたレビューでは、超音波検査の平均的な感度は84.9%、神経伝導検査は83.3%と、超音波検査がわずかに上回る結果が示されました。

 

特異度(病気でない人を正しく「異常なし」と判定できる割合)についても、超音波検査(71.2%)が神経伝導検査(66.6%)をやや上回っており、統計的に大きな差ではないものの、超音波検査が神経伝導検査に劣らない診断精度を持つことが確認されています。

 

 

 

エコー検査だからこそわかることがある

超音波検査には、神経伝導検査にはない利点もあります。手首の周辺には、まれに「正中動脈遺残」と呼ばれる血管の変異や、正中神経が枝分かれした状態で走行している「分岐正中神経」といった、生まれつきの解剖学的なバリエーションを持つ方がいます。

 

こうした構造上の特徴は、超音波検査でなければ確認することができず、手術を安全に行う上で非常に重要な情報となります。

 

また、超音波検査は針や電気刺激を使わず、痛みを伴わないという点も大きな特徴です。実際に、検査を受けた患者さんを対象にした調査では、神経伝導検査よりも超音波検査を好む方が多かったという報告もあります。

 

一方で、神経伝導検査は神経の機能そのものや重症度を数値で評価することに優れており、両方の検査を症状や状況に応じて使い分けることが、より正確な診断につながるとされています。

 

 

 

症状が続く場合の治療の選択肢

手根管症候群は、症状が軽いうちは装具による安静や生活習慣の見直し、注射などの保存的な治療で改善することも少なくありません。しかし、しびれが長期間続いていたり、指先の感覚低下や筋力低下が進んでいたりする場合には、手術による神経の圧迫解除(手根管開放術)が検討されます。

 

当院では、手外科専門医が超音波(エコー)ガイド下での手根管開放術を提供しており、神経や腱の位置をリアルタイムに確認しながら、小さな傷口で身体への負担を抑えた手術が可能です。手のしびれが続いている、夜間に手が痛くて目が覚める、といった症状に心当たりのある方は、放置せず一度ご相談ください。

 

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まとめ

手根管症候群は、手首の中を通る正中神経が圧迫されることで起こる病気で、神経伝導検査と超音波検査という2つの方法で診断されます。近年の研究では、超音波検査が神経伝導検査に劣らない診断精度を持ち、痛みがなく、手術前に必要な構造上の情報も得られるという利点があることが示されています。手のしびれや痛みが気になる方は、早めに専門の医療機関で相談することが大切です。はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、超音波検査を活用した正確な診断と、手外科専門医によるエコーガイド下手術まで、手根管症候群に対する一貫した診療を行っております。

 

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参考文献

  1. Gay ME, Lima JG, Vieites V, Belnap SC, Morgan R. Comparison of Diagnostic Modalities for Carpal Tunnel Syndrome: A Systematic Review. Cureus. 2025 Sep 17;17(9):e92577. doi: 10.7759/cureus.92577.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41122557/

 

【執筆者】
はせがわ整形外科運動器エコークリニック
院長 長谷川 英雄(https://medicalnote.jp/doctors/251104-001-DB)

奈良県立医科大学医学部卒業。日本整形外科学会専門医・日本手外科学会専門医(医学博士)。手外科・運動器エコー診療を専門とし、国内外で研究・教育活動にも従事。チェンマイ大学医学部(タイ)派遣研究員、サン・ロッククリニック(フランス)留学、IRCAD台湾・IRCADストラスブール招聘講師を歴任。日本整形外科超音波学会評議員、Journal of Orthopaedic ScienceおよびJournal of Medicine and Urban Health査読委員など。