肩が痛い、腕が上がらない、そんな症状に悩まされている方の中には「肩関節そのものだけでなく、肩甲骨の動きにも原因があるのでは」と感じている方が増えています。実は肩の動きというのは、上腕骨(二の腕の骨)だけで作られているわけではありません。

 

肩甲骨と上腕骨が絶妙なタイミングで連動しながら動くことで、初めてスムーズな挙上動作が実現しています。この連動のバランスが崩れると、痛みや動きの制限、いわゆる「拘縮」につながることが、近年の整形外科領域の研究でも明らかになってきています。

 

 

今回は、肩関節拘縮(いわゆる五十肩)のメカニズムを解析した最新の論文をもとに、肩の動きの仕組みと治療のポイントについて解説します。

 

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肩関節の動きに隠れた「連動」の仕組み

肩を挙げる動作は、単純に腕の骨(上腕骨)が持ち上がるだけの単純な運動ではありません。肩甲骨が胸郭の上を滑るように回転し、上腕骨の動きと歩調を合わせることで、初めて大きな可動域が生まれます。この上腕骨と肩甲骨の動きの比率は「肩甲上腕リズム」と呼ばれ、整形外科やリハビリテーション分野で古くから研究されてきました。このリズムが崩れることこそが、肩の痛みや動きにくさの背景に潜んでいることが、複数の研究で指摘されています。

 

 

 

最新の研究が示す肩関節拘縮のメカニズム

2025年に発表された三次元有限要素モデルを用いた研究では、特発性の肩関節拘縮(いわゆる五十肩)における関節包と肩甲骨の力学的な関係が詳しく解析されました。この研究によると、肩関節包の下方部分が硬くなり伸びにくくなる(拘縮する)ことで、上腕骨頭が早期に肩峰にぶつかりやすくなり、本来必要な外旋運動がうまく行えなくなることが示されています。

 

この一連の変化が、肩甲上腕リズムの乱れを引き起こす初期のきっかけになっている可能性があると考察されており、肩関節拘縮が単なる関節包の炎症にとどまらず、肩甲骨を含めた動きの連鎖全体に影響を及ぼすことがわかります。

 

 

 

肩甲骨へのアプローチが治療のカギになる

肩関節拘縮に対する治療というと、肩関節そのものへの注射や運動療法をイメージする方が多いかもしれません。しかし、複数の研究をまとめたシステマティックレビューでは、肩甲骨と胸郭の連動を意識した理学療法(肩甲胸郭関節へのアプローチ)を通常の運動療法に加えることで、痛みや可動域、日常生活動作の改善に上乗せの効果が得られる可能性が示されています。

 

肩そのものだけでなく、肩甲骨の動きにまで目を向けたアプローチが、拘縮からの回復を後押しするという点は、多くの臨床現場でも実感されているポイントです。裏を返せば、肩甲骨の動きの評価を怠ったまま治療を進めても、症状が改善しにくいケースがあるということでもあります。

 

 

 

肩の拘縮を放置するとどうなるか

肩関節拘縮は「そのうち自然に治る」と言われることもありますが、痛みが強い時期を我慢して放置してしまうと、可動域制限が長期化し、日常生活動作(着替えや洗髪、家事動作など)に支障をきたすケースも少なくありません

 

肩の動きに違和感を覚えたら、自己判断で様子を見るのではなく、肩甲骨の動きも含めて評価できる医療機関で早めに相談することが大切です。

 

当院では肩関節の可動域や肩甲骨の動きを丁寧に評価し、超音波検査も活用しながら症状の原因を的確に見極める診療を行っております。

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はせがわ整形外科運動器エコークリニックの診療体制について

当院では肩関節疾患に加えて、手や指の疾患についても専門性の高い診療を行っています。特に、手のしびれや使いにくさを引き起こす手根管症候群に対しては、手外科専門医による超音波(エコー)ガイド下手術を提供している点が大きな特徴です。

 

手根管症候群は、手首の部分で正中神経が圧迫されることで、親指から薬指にかけてのしびれや痛み、細かい作業のしづらさが生じる疾患で、肩の症状と合併して自覚されることも少なくありません。エコーガイド下手術は、神経や腱の位置をリアルタイムに確認しながら行うため、従来の切開法に比べて傷口が小さく、身体への負担を抑えながら正確な処置が可能という利点があります。肩のこわばりだけでなく、手のしびれや違和感が気になる方も、ぜひ一度ご相談ください。

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まとめ

肩の動きは、上腕骨と肩甲骨が連動することで初めて成り立っており、そのリズムが崩れることが肩関節拘縮の背景に潜んでいることが、最新の研究からも明らかになってきています。肩そのものだけでなく、肩甲骨の動きまで含めて評価し、適切なアプローチを選択することが、拘縮からのスムーズな回復につながります

 

また、肩の症状にお悩みの方の中には、手のしびれを併発しているケースも見られます。はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、肩関節疾患はもちろん、手外科専門医による手根管症候群のエコーガイド下手術まで、幅広い運動器疾患に対応しております。気になる症状がある方は、お早めにご相談ください。

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参考文献

  1. Khan PS, Yoo YS, Nair AV, Jang SW, Raju A, C K S. Pathomechanics of glenohumeral capsule and scapula in idiopathic frozen shoulder: a study using a three-dimensional finite element model. JSES International. 2025 Apr 30;9(5):1474-1480. doi: 10.1016/j.jseint.2025.04.003.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41049668/
  2. Effects of Scapulothoracic Physical Therapy on Shoulder Function in Adhesive Capsulitis: A Systematic Review and Meta-Analysis. 2025.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13495537/

 

【執筆者】
はせがわ整形外科運動器エコークリニック
院長 長谷川 英雄(https://medicalnote.jp/doctors/251104-001-DB)

奈良県立医科大学医学部卒業。日本整形外科学会専門医・日本手外科学会専門医(医学博士)。手外科・運動器エコー診療を専門とし、国内外で研究・教育活動にも従事。チェンマイ大学医学部(タイ)派遣研究員、サン・ロッククリニック(フランス)留学、IRCAD台湾・IRCADストラスブール招聘講師を歴任。日本整形外科超音波学会評議員、Journal of Orthopaedic ScienceおよびJournal of Medicine and Urban Health査読委員など。