
「肩が痛くて夜も眠れない」
「注射やリハビリを受けても肩の痛みが続いている」
「肩に石灰があると言われたが、手術以外の治療法を知りたい」
このような症状の原因の一つに、石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎、calcific tendinopathy)があります。
石灰沈着性腱板炎では、肩の腱板にカルシウムが沈着し、強い肩の痛みや腕を上げたときの痛みなどを引き起こすことがあります。
今回紹介する論文では、従来の保存療法で改善しなかった石灰沈着性腱板炎に対して、Tenex(テネックス)を用いた超音波ガイド下治療が行われ、その治療成績が報告されています。
はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、大阪でTenexによる治療を提供しています。
肩の石灰沈着性腱板炎で治療を続けても痛みが改善せず、手術以外の治療について相談したい方は、はせがわ整形外科運動器エコークリニック公式ホームページもご覧ください。
石灰沈着性腱板炎とは?
石灰沈着性腱板炎は、肩関節を動かす重要な組織である「腱板」にカルシウムが沈着する病気です。
今回の論文によると、石灰沈着性腱板炎は40~60歳の成人に多くみられる肩痛の原因であり、特に棘上筋腱に石灰が沈着することが多いとされています。
原因については完全には解明されておらず、必ずしも外傷や肩の使いすぎによって起こるものではありません。
典型的には肩の深い部分に痛みを感じ、痛みが腕の外側から肘方向へ広がることがあります。また、腕を頭の上に上げるような動作で痛みが生じることもあります。
診断にはレントゲン、超音波(エコー)、MRIなどが用いられます。
「肩に石灰がある=必ず手術が必要」というわけではありません。
石灰の状態、腱板の状態、痛みの程度などを評価しながら治療方針を検討することが重要です。
石灰沈着性腱板炎の一般的な治療
石灰沈着性腱板炎では、まず保存療法が選択されることが一般的です。
今回の論文では、安静、理学療法、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、体外衝撃波治療などが保存的治療として挙げられています。
一方で、約10%の患者では保存療法に抵抗性を示すとの報告も紹介されています。
保存療法で十分な改善が得られない場合には、ステロイド注射、超音波ガイド下で石灰を洗浄する治療、関節鏡手術などが検討されてきました。
そして、こうした保存療法と手術の間を埋める治療選択肢の一つとして考えられるのが、Tenexを用いた経皮的超音波治療です。
Tenexとは?超音波を使って病変部を処置する治療
Tenexは、超音波エネルギーを利用して病的な腱組織などを処置するためのデバイスです。
論文では、Tenex Health社の機器について、超音波エネルギーを利用して病的な腱組織をデブリードマンし、吸引する仕組みが説明されています。
今回の石灰沈着性腱板炎に対する治療では、エコーで石灰の位置をリアルタイムに確認しながらTenexの先端を病変部へ進めます。
そして、低振幅・高周波の動きによって石灰を徐々に細かくしながら吸引する方法が用いられました。
論文に掲載されている超音波画像では、石灰沈着部へ器具を進め、エコーで確認しながら石灰を処置していく過程が示されています。
さらに治療前後のレントゲン画像では、治療前に確認できた石灰沈着が治療後に消失した症例も提示されています。

Tenex治療の大きな特徴の一つは、超音波(エコー)で病変部と器具をリアルタイムに確認しながら処置できることです。
はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、運動器エコーを活用した診療を行っています。
Tenexを含めた治療について詳しく知りたい方は、はせがわ整形外科運動器エコークリニックをご確認ください。
Tenexで石灰沈着性腱板炎8例を治療した研究
今回紹介する研究は、棘上筋腱の石灰沈着性腱板炎に対して超音波ガイド下のTenexによる治療を行った8人の患者を対象としたパイロット症例集積研究です。
対象となったのは男性5人、女性3人でした。
重要なのは、対象患者がいずれも、それまでの保存療法で十分な改善が得られていなかった点です。
患者は平均24か月にわたって肩の症状があり、肩の痛み、腕を上げたときの痛み、安静時痛などを認めていました。
また、全員が理学療法を受けても改善せず、少なくとも1回の肩峰下滑液包へのステロイド注射を受けていました。
つまり、この研究は単に「肩に石灰が見つかった患者」にTenexを行ったものではありません。
従来の治療を行っても症状が続いていた患者に対して、次の治療選択肢としてTenexが検討された研究なのです。
Tenex治療後、肩の痛みはどう変化した?
この研究で特に注目したいのが、治療後の痛みの変化です。
治療前と比較して、治療1か月後、2か月後、3か月後のすべてで統計学的に有意な痛みの低下が確認されました。
効果量は、
1か月後:1.93
2か月後:1.84
3か月後:2.20
でした。
論文で用いられた基準では、1.3~2.0が「large」、2.0を超えるものが「very large」とされています。
つまり、今回の8症例では治療後に大きな疼痛スコアの変化が認められました。
さらに8人全員で1か月後に痛みが低下し、その改善は2か月後、3か月後にも維持されていました。
患者ごとの疼痛スコアを示した論文のグラフでも、全症例で治療前より痛みが改善していることが確認できます。
また、今回の8症例では有害事象や合併症は報告されませんでした。
局所麻酔のみで処置が行われ、処置後に処方鎮痛薬を必要とした患者はおらず、全員が6週間以内に通常の日常生活へ復帰したと報告されています。
石灰が硬くてもTenexは治療できる?
石灰沈着性腱板炎では、エコーによって石灰の性状をある程度評価することができます。
今回の研究では、石灰を「soft」「medium」「hard」に分類しています。
興味深いのは、石灰の性状にかかわらず、今回の患者全員で治療後の疼痛スコアが改善したことです。
石灰が硬いタイプを含め、今回の8症例すべてで治療後の疼痛改善が確認されました。
著者らは、さらなる研究が必要であるとしたうえで、従来の非手術治療では良好な結果を得にくいと予測される石灰の特徴を持つ患者についても、将来的に代替治療となる可能性を指摘しています。
ただし、石灰があれば誰でもTenexの適応になるわけではありません。
石灰の位置・形状・硬さだけでなく、腱板の状態や痛みとの関連を総合的に評価することが重要です。
Tenexなら手術をしなくて済む?
ここは今回の論文を読むうえで非常に重要なポイントです。
この研究結果だけから「Tenexを受ければ手術は不要」「Tenexなら必ず治る」と結論づけることはできません。
今回の研究は、わずか8人を対象としたケースシリーズです。
比較対象となる対照群もなく、経過観察期間も3か月と短期間でした。
さらに、筋力や関節可動域、日常生活動作などについて正式な評価が行われていないことや、すべての患者に治療後の画像評価が行われていないことも研究の限界として挙げられています。
今回の結果はTenexの有効性を確定するものではなく、「保存療法で改善しない石灰沈着性腱板炎に対する新しい治療選択肢になり得る」という予備的なエビデンスとして捉える必要があります。
論文の結論でも、石灰沈着性腱板炎の多くではまず標準的な保存療法を行うべきだとされています。
そのうえで、保存療法を行っても改善しない場合には、超音波ガイド下の腱切除・デブリードマンを治療選択肢として検討することは合理的であると著者らは結論づけています。
大阪で石灰沈着性腱板炎・Tenex治療を相談したい方へ
石灰沈着性腱板炎は、薬やリハビリ、注射などで改善するケースがある一方、治療を続けても肩の痛みが残る患者さんもいます。
「肩に石灰があると言われて治療しているけれど、なかなか良くならない」
「何度も注射を受けている」
「リハビリを続けているが肩が痛い」
「手術を勧められたが、その前にほかの治療方法も知りたい」
こうした場合には、同じ治療を繰り返すだけではなく、エコーなどを用いて現在の石灰や腱板の状態を評価したうえで、次の治療方法を検討することが大切です。
はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、大阪でTenexを提供しています。
石灰沈着性腱板炎に対してTenexが適しているかどうかは、症状や画像所見などによって異なります。
大阪で石灰沈着性腱板炎の治療やTenexについて相談したい方は、はせがわ整形外科運動器エコークリニック公式ホームページをご覧ください。
まとめ|治りにくい石灰沈着性腱板炎には新たな治療選択肢も
今回紹介した論文では、保存療法で改善しなかった棘上筋腱の石灰沈着性腱板炎8症例に対して、Tenexを用いた超音波ガイド下治療が行われました。
8症例すべてで治療後の疼痛スコアが改善し、3か月後まで治療前より低い状態が維持されました。また、この8症例では有害事象は報告されませんでした。
一方で、小規模な症例集積研究であり、長期的な有効性や他の治療法との優劣については、今後さらに質の高い研究による検証が必要です。
石灰沈着性腱板炎の治療で大切なのは、「レントゲンに石灰がある」という画像所見だけで治療方法を決めることではありません。
現在の痛みがどこから生じているのか、石灰がどこに存在するのか、腱板にどのような変化が起きているのかなどを評価し、一人ひとりに適した治療を考えることが重要です。
保存療法を続けても改善しない石灰沈着性腱板炎では、Tenexのような低侵襲治療が選択肢となる可能性があります。
大阪で石灰沈着性腱板炎の治療やTenexについて相談したい方は、はせがわ整形外科運動器エコークリニックまでご相談ください。
※本記事は医学論文の内容を一般の方にも分かりやすく紹介することを目的としています。治療の適応や効果には個人差があります。実際の治療方法については、診察や画像評価などをもとに医師とご相談ください。
【執筆者】
はせがわ整形外科運動器エコークリニック
院長 長谷川 英雄
奈良県立医科大学医学部卒業。日本整形外科学会専門医・日本手外科学会専門医(医学博士)。手外科・運動器エコー診療を専門とし、国内外で研究・教育活動にも従事。チェンマイ大学医学部(タイ)派遣研究員、サン・ロッククリニック(フランス)留学、IRCAD台湾・IRCADストラスブール招聘講師を歴任。日本整形外科超音波学会評議員、Journal of Orthopaedic ScienceおよびJournal of Medicine and Urban Health査読委員など











