手のケガや手術の後に、「指が曲がらなくなった」「指が伸びなくなった」という症状で悩まれる患者さんは少なくありません。
この状態は英語で「Stiff Finger(スティッフフィンガー)」と呼ばれ、日本語では「指関節拘縮」や「指のこわばり」と表現されます。
指の拘縮は単なる関節の問題ではありません。皮膚、腱、靭帯、関節包、骨など、多くの組織が関与するため、治療には高度な専門知識が必要です。
今回は、米国ミシガン大学のKevin Chung教授らによるレビュー論文をもとに、指拘縮の原因と治療法について解説します。

指の拘縮とは何か?
指の正常な動きには以下の要素が必要です。
・正常な骨格構造
・神経機能
・筋肉機能
・腱の滑走
・柔軟な関節
これらのいずれかに問題が生じると、指の可動域が低下します。
特に問題となるのは、外傷や手術後に起こる瘢痕形成(傷跡の硬化)です。
骨折が治癒していても、
「指が握れない」
「指が伸びない」
「物が持ちにくい」
という症状が残ることがあります。
論文では、ほぼすべての指の外傷が拘縮の原因となり得ると述べられています。
指拘縮の原因は4つに分類できる
指拘縮の原因は大きく4つに分類されます。
1. 皮膚や筋膜の問題
・外傷後の瘢痕
・熱傷後瘢痕
・デュピュイトラン拘縮
2. 腱や筋肉の問題
・屈筋腱癒着
・伸筋腱癒着
・内在筋拘縮
3. 関節包・靭帯の拘縮
・PIP関節拘縮
・MCP関節拘縮
・掌側板拘縮
4. 骨変形
・関節内骨折後変形
・変形治癒
・関節症
実際の臨床では、これらが単独で存在することは少なく、複数の原因が重なっていることが多いのが特徴です。
指拘縮は予防が最も重要
論文の中で繰り返し強調されているのが、
「拘縮は治療するより予防する方がはるかに重要である」
という点です。
外傷や手術後に長期間固定すると、
・関節包短縮
・靭帯短縮
・腱癒着
・浮腫
が生じます。
その結果、指はどんどん硬くなっていきます。
そのため手外科領域では、
必要最小限の固定期間
可能な限り早期からの運動療法
が重要視されています。
保存治療で改善できるケースは非常に多い
指拘縮と聞くと手術を想像する方も多いですが、実際には保存治療で改善する症例が多数存在します。
論文では、
87%の拘縮症例が手術を行わず改善した
と報告されています。
保存治療には以下があります。
・運動療法
・関節モビライゼーション
・装具療法
・ダイナミックスプリント
どのような場合に手術が必要になるのか?
保存治療で改善しない場合には手術を検討します。
ただし論文では、
「手術は治療の一部であり、手術だけで拘縮が治るわけではない」
と強調されています。
手術後のリハビリテーションが成功の鍵となります。
MCP関節拘縮に対する手術
指の付け根(MCP関節)が曲がらない場合には、
・関節包切開(Capsulotomy)
・側副靭帯リリース
などを行います。
論文ではMCP関節手術後、
平均20〜30度程度の可動域改善が報告されています。
PIP関節拘縮は最も治療が難しい
PIP関節(第2関節)は手外科医にとって最も難しい関節のひとつです。
特に外傷後拘縮では、
・掌側板拘縮
・側副靭帯拘縮
・腱癒着
が複雑に絡み合います。
そのため、
・掌側板リリース
・側副靭帯切離
・腱剥離術
などを組み合わせて治療します。
術後は48時間以内から運動を開始することが推奨されています。
指拘縮治療で最も重要なのは「正確な原因診断」
拘縮した指を診察するときに最も重要なのは、
どの組織が動きを妨げているのかを見極めること
です。
例えば、
・腱癒着
・関節包拘縮
・靭帯拘縮
・骨変形
では治療方針がまったく異なります。
同じ「指が曲がらない」という症状でも、原因が違えば治療法も変わります。

はせがわ整形外科運動器エコークリニックの指拘縮診療
はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、
手外科専門医が指拘縮の診断と治療を専門的に行っています。
超音波検査を活用しながら、
・腱癒着の評価
・滑走障害の評価
・関節拘縮の評価
を行っています。
また保存治療だけでなく、
拘縮解除術
腱剥離術(Tenolysis)
関節包切開術(Capsulotomy)
などの手外科手術にも対応しています。
詳細は当院ホームページ(https://hasegawaseikei.com/)をご覧ください。
他院の先生方へ ― 手術症例のご紹介を歓迎しております
指拘縮は、一般整形外科診療の中でも治療に難渋することが多い疾患です。
特に、
・骨折後に指が動かない
・術後拘縮が残存している
・リハビリを続けても改善しない
・腱癒着が疑われる
・PIP関節拘縮が高度である
といった症例では、手外科専門的治療が必要になる場合があります。
はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、手外科専門医による診療を行い、必要に応じて連携病院で院長が執刀する手術治療まで一貫して対応しております。
他院からご紹介いただいた患者さんについては、診療情報を速やかにご報告し、地域連携を大切にした診療を心掛けております。
「この拘縮は手術適応だろうか」
「保存治療を続けるべきだろうか」
と迷われる症例がございましたら、お気軽にご紹介ください。

まとめ
指拘縮(Stiff Finger)は、外傷や手術後に生じる非常に頻度の高い後遺症です。
原因は皮膚、腱、靭帯、関節包、骨など多岐にわたり、適切な診断が不可欠です。
保存治療で改善する症例は多いものの、難治例では専門的な手外科手術が必要になります。
指が曲がらない、伸びない、握れないなどの症状でお困りの方は、早めに手外科専門医へご相談ください。











