参考文献
奥津一郎,浜中一輝,吉田 綾.長期血液透析患者に発生した手根管症候群とその治療―19年間の内視鏡治療経験―.日本透析医会雑誌.2005;20(2):307-313.

 

 

長期間透析を受けている患者さんのなかには、「手がしびれる」「夜中に痛くて目が覚める」「ボタンがかけにくい」「箸が使いにくい」といった症状に悩まれている方が少なくありません。

 

実はその症状、単なる加齢や血行不良ではなく、透析アミロイドーシスによる手根管症候群が原因かもしれません。

 

透析患者さんの手根管症候群は一般的な手根管症候群とは発症メカニズムが異なり、進行すると手の機能が大きく低下する可能性があります。しかし、適切な診断と治療によって症状の改善が期待できます。

今回は、長期透析患者さんに発症する手根管症候群について、医学論文をもとに詳しく解説します。

 

 

 

透析患者さんに手根管症候群が多い理由

長期間透析を続けると、体内にβ2ミクログロブリン由来のアミロイドという異常蛋白が蓄積します。

このアミロイドが手首のトンネル(手根管)内の腱や腱鞘に沈着すると、手根管の内部が狭くなり、正中神経が圧迫されるようになります。これが透析患者さんの手根管症候群の本態です。

一般的な手根管症候群は中高年女性に多くみられますが、透析患者さんでは透析歴が長くなるほど発症リスクが高くなります。

重要なのは、透析患者さんの手根管症候群は自然に治ることがほとんどないという点です。

副木固定や痛み止めで一時的に症状が軽くなることはあっても、病気そのものは進行し続けます。

 

 

 

このような症状はありませんか?

透析患者さんの手根管症候群では次のような症状が現れます。

・親指、人差し指、中指のしびれ
・夜間の手の痛みやしびれ
・透析中に悪化する手の痛み
・物をつまみにくい
・ボタンをかけにくい
・箸が使いにくい
・ペットボトルの蓋が開けにくい
・親指の付け根が痩せてきた

特に特徴的なのは、夜間痛が強いことです。

なかには睡眠が妨げられるほど症状が強く、透析中の苦痛が増して透析継続に支障をきたす患者さんもいます。

 

 

 

「首の病気」と間違われることもあります

透析患者さんでは頚椎の変性も起こりやすいため、首の神経障害と手根管症候群が混同されることがあります。

手のしびれだけでなく前腕や上腕まで痛みが広がることもあるため、診断には専門的な評価が必要です。

そのため、「透析をしているから仕方ない」「首から来ていると言われた」という患者さんのなかにも、実際には手根管症候群が隠れているケースがあります。

 

 

 

エコー診断が非常に有用です

従来は神経伝導検査が診断の中心でした。

しかし近年では運動器エコー(超音波検査)の発達により、

・正中神経の腫れ
・神経の圧迫部位
・腱鞘の肥厚
・透析アミロイドーシスに伴う組織変化

などをリアルタイムで評価できるようになっています。

当院では診察室でその場で運動器エコーを行い、患者さんと一緒に画像を確認しながら病状を説明しています。

https://hasegawaseikei.com/

 

 

 

手術は早めに受けた方がよい理由

透析患者さんの手根管症候群は進行性です。

論文では、手術を受けずに放置すると正中神経障害が進み、親指の筋肉(母指球筋)が萎縮してしまうことが指摘されています。

一度高度な筋萎縮が起こると、手術後も筋力が完全には戻らないことがあります。

つまり、

「しびれが我慢できなくなったら手術」では遅い場合がある

ということです。

特に

・親指の力が弱くなった
・細かい作業がしにくい
・物を落としやすい

という症状が出ている方は早めの受診をおすすめします。

 

 

 

低侵襲な内視鏡手術という選択肢

論文では、奥津らが開発した内視鏡手術について報告しています。

この方法では前腕に約1cmの小切開を加えるのみで手術が可能です。空気止血帯も使用せず、局所麻酔で日帰り手術として行われています。

透析患者さんは

・出血しやすい
・感染しやすい
・シャントへの配慮が必要

という特徴があります。

そのため、できるだけ身体への負担が少ない低侵襲治療が望ましいとされています。

論文では、手術後5〜7週間で約75%の患者さんにしびれや感覚障害の改善がみられ、24週後には約90%以上で回復していました。

 

 

 

透析患者さんには「ばね指」も多い

透析アミロイドーシスは手根管症候群だけではありません。

手の腱や腱鞘にアミロイドが沈着することで、

・ばね指
・手根管症候群
・手首の痛み
・手指のこわばり

などさまざまな症状を引き起こします。

実際に透析患者さんでは手根管症候群とばね指を合併しているケースも少なくありません。

そのため、手根管症候群だけでなく、手全体を総合的に評価できる医療機関への受診が重要です。

 

 

 

はせがわ整形外科運動器エコークリニックの透析患者さん診療

はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、手外科専門医が透析患者さんのあらゆる手の症状に対応しています。

院長は大学病院勤務時代から多数の透析患者さんの手外科診療・手術に携わってきました。

透析患者さん特有の

・手根管症候群
・ばね指
・透析アミロイドーシスによる手の痛み
・手指のしびれ
・手首の痛み
・母指CM関節症

などを専門的に診療しています。

また、運動器エコーを活用することで、透析患者さんの複雑な手の症状をリアルタイムで評価し、患者さんにわかりやすく説明しています。

手術が必要な場合も、患者さんの全身状態や透析スケジュールを考慮しながら適切な治療方針をご提案しています。

 

 

 

手のしびれを「透析のせい」と諦めないでください

透析患者さんの手のしびれや痛みは、決して我慢するしかない症状ではありません。

手根管症候群は適切な診断と治療によって改善が期待できる疾患です。

特に

・夜間のしびれで眠れない
・透析中に手が痛い
・親指の力が弱くなった
・ばね指がある
・ボタンをかけにくくなった

という症状がある方は、早めの受診をおすすめします。

はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、手外科専門医が透析患者さんの手の症状を専門的に診療しています。

詳しくは当院ホームページをご覧ください。

https://hasegawaseikei.com/

透析患者さんの手のしびれや痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。