参考文献
Saita Y, Kobayashi Y, Uchino S, et al. Platelet-rich plasma therapy for knee osteoarthritis: Insights from real-world clinical data in Japan. Regenerative Therapy. 2025;29:427-434.

 

変形性膝関節症は、日本でも非常に患者数の多い疾患です。
膝の痛みによって歩行がつらくなり、階段の昇降が困難となり、日常生活の質を大きく低下させます。

 

近年、その治療法として注目されているのがPRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿)治療です。

 

PRP治療は、ご自身の血液から抽出した血小板を利用し、組織修復や炎症抑制を促す再生医療です。
しかし、「本当に効果があるのか?」という点については、これまで世界的にも議論が続いてきました。

今回、日本国内で実際に行われたPRP治療の大規模データを解析した論文が報告されました。
この研究は、日本の再生医療データベースを用いて、実臨床でのPRP治療の効果や特徴を解析した非常に重要な研究です。

 

 

2000人以上を解析した日本のリアルワールドデータ

今回の研究では、順天堂大学病院でPRP治療を受けた2068人、2815膝という非常に大規模なデータが解析されました。

平均年齢は65歳で、女性が多く含まれていました。
患者さんは、保存治療を続けても改善しない慢性的な膝痛を有しており、日本の再生医療データベース(NRMD)へ登録された症例です。

PRPは白血球を少なくした「LP-PRP」が使用され、3〜5週間ごとに3回注射が行われました。

つまり、この研究は「理想的な条件の研究室データ」ではなく、実際の医療現場で行われているPRP治療の結果を反映している点が大きな特徴です。

 

 

 

PRP治療で膝の痛みは有意に改善した

研究では、VAS(Visual Analog Scale)という疼痛評価が用いられました。

治療前の痛みスコアは平均53.5でしたが、6か月後には35.8まで改善していました。

つまり、PRP治療によって膝の痛みが有意に改善したという結果です。

特に注目すべき点は、重篤な副作用や感染症が報告されなかったことです。

再生医療というと「安全性が心配」というイメージを持つ方もおられますが、この研究では安全性の高さも示されています。

 

 

 

PRP治療が効きやすい人・効きにくい人

今回の研究で非常に興味深かったのは、「どのような患者さんにPRPが効きやすいのか」が解析された点です。

結果として、

・変形が軽度〜中等度
・年齢が若い
・BMIが低い
・O脚変形が強すぎない

このような患者さんで、より良好な結果が得られる傾向が示されました。

一方で、KL分類4(高度変形性膝関節症)では改善度が低下していました。

つまり、関節の変形が完全に進行してしまう前にPRP治療を検討することが重要である可能性があります。

「まだ手術は避けたい」
「ヒアルロン酸では改善しなくなってきた」
「できれば人工関節は先延ばしにしたい」

このような患者さんにとって、PRP治療は有力な選択肢になり得ます。

 

 

 

ヒアルロン酸を何十回も受けている患者さんが多かった

この研究では、多くの患者さんが過去にヒアルロン酸注射を受けていました。

中には50回以上ヒアルロン酸注射を受けていた患者さんも存在していました。

これは、変形性膝関節症の患者さんが長期間にわたって痛みと付き合っている現状を示しています。

ヒアルロン酸注射は重要な治療ですが、効果が徐々に乏しくなることもあります。

そのような場合に、再生医療という新しい選択肢が注目されているのです。

 

 

 

PRP治療は「誰にでも効く魔法の治療」ではない

今回の論文でも、PRP治療の効果には個人差があることが示されています。

海外の研究でも結果は完全には一致しておらず、アメリカ整形外科学会(AAOS)やOARSIでは慎重な立場が示されています。

一方で、ヨーロッパのESSKAではPRPを有効な治療選択肢として推奨しています。

つまり、現時点では、

「適切な患者さんを選ぶこと」がPRP治療成功の鍵

であると考えられています。

そのためには、

・膝の変形の程度
・炎症の状態
・歩行機能
・体重
・筋力
・関節液の状態

などを総合的に評価する必要があります。

 

 

 

エコーを用いたPRP治療の重要性

PRP治療では、「どこに正確に注射するか」が非常に重要です。

論文でも、膝蓋上嚢への注射が行われていましたが、実際の臨床では関節液の貯留や滑膜炎の部位、変性部位を正確に把握することが重要になります。

はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、手外科専門医が運動器エコーを用いながらPRP治療を行っています。

エコーを用いることで、

・関節内をリアルタイムに確認できる
・炎症部位を評価できる
・血管や神経を避けながら安全に注射できる
・薬液を正確な位置へ注入できる

という大きなメリットがあります。

特に膝関節は、患者さんによって関節液の位置や滑膜炎の部位が異なります。

エコーガイド下で正確にPRPを注入することは、治療精度を高めるうえで非常に重要です。

 

 

 

変形性膝関節症でお悩みの方へ

変形性膝関節症は、「年齢のせいだから仕方ない」と諦めてしまう方が少なくありません。

しかし近年では、

・運動療法
・体重管理
・注射治療
・再生医療

などを組み合わせることで、痛みを軽減し、生活の質を改善できる可能性があります。

特に、

・ヒアルロン酸で改善しなくなってきた
・手術はまだ避けたい
・できるだけ自分の関節を温存したい
・再生医療に興味がある

このような方は、一度専門的な評価を受けることをおすすめします。

はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、運動器エコーを用いた詳細な評価を行い、患者さん一人ひとりに適した治療をご提案しています。

 

 

膝のPRP治療について詳しく知りたい方は、ぜひ当院ホームページをご覧ください。

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