参考文献
Palee S, Lu C, Betcher A, Yener U, Alerte J, Howarth D, Cooper L, Hasanoglu AN, Abd-Elsayed A, Wahezi SE. Tendon modification with percutaneous Ultrasound-Guided Tenotomy using TENEX®: A histological and macroscopic analysis of a bovine cadaveric model. Interventional Pain Medicine. 2025;4:100590.

 

肩、肘、膝、アキレス腱、足底腱膜などの痛みが長引く場合、その原因の一つに「慢性腱障害」があります。

腱障害とは、腱に炎症だけでなく、変性、肥厚、線維の乱れ、血管や神経の異常な増生などが起こり、痛みが慢性化する状態です。

湿布、内服、注射、リハビリを続けてもなかなか改善しない腱の痛みでは、単なる炎症ではなく、腱そのものの質が変化していることがあります。

今回紹介する論文では、Tenexを用いた経皮的超音波ガイド下腱切開・腱デブリードマンが、腱や腱周囲組織にどのような変化を起こすのかを、肉眼的・組織学的に詳しく調べています。

 

Tenex治療がなぜ慢性腱障害に効果を発揮するのかを理解するうえで、非常に重要な基礎研究です。

 

 

 

 

Tenex治療とは何か

Tenex治療とは、超音波画像で痛みの原因となっている腱の変性部分を確認しながら、専用の細い器具を用いて傷んだ腱組織を処置する低侵襲治療です。

皮膚を大きく切開する手術とは異なり、超音波で病変を見ながらピンポイントに治療できることが特徴です。

Tenexでは、高周波の超音波エネルギーを利用して、変性した腱組織や腱周囲の病的な組織にアプローチします。

慢性腱障害では、痛みの原因が腱の表面や腱周囲組織に存在することがあります。特に近年注目されているのが、パラテノンと呼ばれる腱周囲組織です。

このパラテノンには、痛みに関係する神経や血管が存在しており、慢性痛の原因に関与している可能性があります。

Tenex治療は、単に腱を刺激する治療ではなく、超音波ガイド下に病的な腱組織や腱周囲組織を的確に処置する治療です。

 

 

 

今回の論文で調べられたこと

この研究では、牛のアキレス腱由来の腱組織を用いて、Tenexによる処置時間の違いが腱にどのような変化を起こすかを調べています。

治療時間は、1分、3分、5分、7分

の4つに分けられました。

それぞれの腱にTenexを行い、反対側の未処置部分を比較対象として、肉眼的な変化と顕微鏡による組織学的変化を評価しています。

 

この研究の重要な点は、単に「Tenexを行ったら痛みが改善した」という臨床結果を見るだけではなく、実際に腱や腱周囲組織で何が起きているのかを組織レベルで確認していることです。

つまり、Tenex治療の効果のメカニズムを考えるうえで重要な論文といえます。

 

 

 

 

 

Tenexにより腱周囲組織が時間依存的に変化した

この研究では、Tenexの処置時間が長くなるほど、腱周囲組織であるパラテノンのゆるみや分離が進むことが示されました。

 

1分の処置では、腱周囲組織の変化は軽度でした。

3分では、腱周囲組織の分離が始まり、腱の硬さにもわずかな変化が見られました。

5分では、腱周囲組織の分離がより明確となり、腱の硬さも低下しました。

7分では、最も大きな変化が見られ、腱周囲組織が腱本体からはっきりと区別できるほどになりました。

 

 

つまりTenexは、処置時間に応じて腱周囲組織に段階的な変化を起こすことが示されました。

慢性腱障害では、腱そのものだけでなく、腱周囲の神経や血管が痛みに関係している可能性があります。そのため、腱周囲組織に変化を起こすTenexの作用は、慢性痛の改善に関係している可能性があります。

 

 

 

 

 

顕微鏡で見ると腱線維にも変化が起きていた

顕微鏡での観察でも、Tenexによる変化は処置時間に応じて強くなっていました。

未処置の腱では、腱周囲組織は保たれており、腱線維も整った構造をしていました。

1分では、腱周囲組織にわずかなゆるみが見られる程度でした。

3分では、腱周囲組織の分離と、腱線維の配列の乱れが出始めました。

5分では、腱周囲組織の分離がより明らかになり、腱線維にもはっきりとした変化が認められました。

7分では、腱周囲組織の広範な分離や一部の消失、腱線維の広範な構造変化が確認されました。

この結果は、Tenexが腱の表面だけでなく、腱線維の構造にも一定の変化を与えることを示しています。

ただし、これは牛の腱を用いた基礎研究であり、人の腱にそのまま同じ結果が当てはまるわけではありません。臨床では、腱の厚み、痛みの部位、変性の程度を超音波で確認しながら、適切な範囲と強さで治療を行うことが重要です。

 

 

 

Tenexの処置時間が長いほど腱への到達深度が深くなった

この研究では、Tenexによる腱線維への到達深度も測定されています。

結果は以下の通りです。

1分:0.10mm
3分:2.57mm
5分:2.61mm
7分:3.93mm

処置時間が長くなるほど、腱組織への変化が深くなる傾向が認められました。

特に1分と3分では大きな差があり、3分と5分では大きな差がありませんでした。一方で、7分ではさらに深い変化が見られました。

このことから、Tenexの作用は処置時間に依存する一方で、単純に長く行えばよいというものではなく、目的に応じた適切な治療時間の設定が重要であることが分かります。

痛みの原因に対しては比較的短時間の処置で腱周囲組織に作用し、より深い腱組織の変化が必要な場合には慎重に処置範囲や時間を調整する必要があります。

 

 

 

 

慢性腱障害の痛みには神経の異常な増生が関係する

慢性腱障害では、腱の中や腱周囲に本来少ないはずの神経線維が増えることがあります。

これを病的神経新生、あるいは神経の異常な侵入と考えることがあります。

腱障害の痛みは、単に「炎症があるから痛い」という単純なものではありません。

長引く腱の痛みでは、

腱線維の変性
腱周囲組織の肥厚
異常な血管増生
痛みに関係する神経線維の増加
腱の滑走性低下
局所の柔軟性低下

などが複雑に関係します。

この論文でも、腱周囲組織に小さな血管や神経線維が存在することが示されています。

Tenexが腱周囲組織を分離・処置することで、慢性痛に関係する神経や血管の環境を変化させる可能性があります。

これが、Tenex治療後に痛みや機能が改善する一つの理由かもしれません。

 

 

 

 

 

なかなか治らない腱の痛みにTenexが選択肢となる理由

慢性腱障害では、まず保存治療が基本です。

  • 安静
  • ストレッチ
  • 筋力トレーニング
  • 装具療法
  • 内服薬
  • 外用薬
  • 注射治療

などを行います。

しかし、保存治療を続けても症状が改善しない患者さんもいます。

論文内でも、腱障害に対する保存治療では一定数の患者さんで十分な症状改善が得られず、手術が検討される場合があると述べられています。

ただし、手術はすべての患者さんに適しているわけではありません。

  1. 傷が大きくなる
  2. 復帰までの期間が長くなる
  3. 合併症のリスクがある
  4. 仕事やスポーツへの復帰に時間がかかる
  5. 手術に抵抗がある

といった問題があります。

その間に位置する治療として、Tenexのような低侵襲治療が注目されています。

Tenexは、保存治療で改善しにくい慢性腱障害に対して、手術より低侵襲に病変部へアプローチできる可能性がある治療です。

 

 

 

Tenex治療は「魔法の治療」ではなく、正確な診断が重要

Tenexは非常に有用な治療選択肢ですが、すべての痛みに効果があるわけではありません。

大切なのは、痛みの原因が本当に腱障害なのかを正確に見極めることです。

例えば、肘の外側の痛みでも、

  • テニス肘
  • 関節内病変
  • 神経障害
  • 頚椎由来の痛み
  • 靱帯損傷
  • 筋膜性疼痛

など、原因はさまざまです。

膝や足、肩の痛みでも同じです。

そのためTenex治療を行う前には、診察、身体所見、超音波検査、必要に応じた画像検査を組み合わせて、痛みの原因を正確に診断する必要があります。

Tenex治療で最も重要なのは、治療機器そのものではなく、どこを治療すべきかを見極める診断力です。

超音波で病変を確認しながら治療するため、エコーの技術と腱障害に対する理解が治療結果に大きく関わります。

 

 

 

 

はせがわ整形外科運動器エコークリニックのTenex治療

はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、Tenexを用いた治療の実施実績が豊富にあります。

当院では、運動器エコーを診療の中心に据え、痛みの原因をできる限り正確に評価したうえで治療方針を決定しています。

Tenex治療においても、単に「痛い場所に処置をする」のではなく、

  • どの腱が傷んでいるのか
  • 腱のどの部分に変性があるのか
  • 腱周囲組織の肥厚があるのか
  • 神経や血管の走行に注意すべき部位はどこか
  • リハビリで改善できる余地があるのか
  • Tenexが本当に適応となるのか

を丁寧に確認します。

Tenexは超音波ガイド下で行う治療であるため、運動器エコーを専門的に扱うクリニックで受けることが非常に重要です。

当院では、診断、注射、リハビリ、Tenex治療を総合的に判断し、患者さん一人ひとりに合った治療を提案します。

リンク:はせがわ整形外科運動器エコークリニック

リンク:腱付着部症に対するTenex

 

 

Tenex治療の対象となる可能性がある症状

Tenex治療は、慢性的な腱障害に対して検討される治療です。

代表的には、

  1. テニス肘
  2. ゴルフ肘
  3. アキレス腱障害
  4. 膝蓋腱炎
  5. 大腿四頭筋腱炎
  6. 足底腱膜症
  7. 肩周囲の腱障害
  8. 股関節外側部痛に関連する腱障害

などが対象となることがあります。

 

ただし、症状名だけでTenexの適応が決まるわけではありません。

実際にTenexが適しているかどうかは、超音波検査で腱の状態を確認し、診察所見と合わせて判断する必要があります。

同じ「テニス肘」でも、腱の変性が強い人、神経症状が主体の人、関節内の問題が隠れている人では治療方針が異なります。

そのため、まずは正確な診断が必要です。

リンク:腱付着部症に対するTenex

 

 

 

 

Tenex治療後はリハビリも重要

Tenexで病変部にアプローチした後も、痛みを長期的に改善するためにはリハビリが重要です。

慢性腱障害では、腱そのものの変性だけでなく、関節の動き、筋力、使い方、姿勢、スポーツ動作、仕事での負担などが関係します。

Tenex治療で痛みの原因にアプローチしても、同じ負担が繰り返されれば再発する可能性があります。

そのため、治療後には、

  1. 腱に過剰な負担をかけない動作指導
  2. 段階的な筋力トレーニング
  3. ストレッチ
  4. 可動域改善
  5. 仕事やスポーツ復帰に向けた負荷調整
  6. 再発予防のためのフォーム指導

などが重要になります。

Tenex治療は単独で完結する治療ではなく、正確な診断、適切な処置、治療後のリハビリを組み合わせることで効果を最大化できます。

 

はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、治療だけでなく、その後のリハビリまで含めて総合的に対応します。

リンク:腱付着部症に対するTenex

 

 

 

 

今回の論文から分かるTenex治療のポイント

今回の論文から分かる重要なポイントは、Tenexが腱や腱周囲組織に時間依存的な構造変化を起こすという点です。

特に、腱周囲組織であるパラテノンの分離や、腱線維の構造変化が確認されました。

これは、Tenexが慢性腱障害に対して効果を示す可能性のあるメカニズムを説明する重要な所見です。

慢性腱障害の痛みには、腱そのものの変性だけでなく、腱周囲の神経や血管、パラテノンの状態が関与している可能性があります。

Tenexは、超音波ガイド下にこれらの病的な組織へ低侵襲にアプローチできる治療として期待されています。

一方で、この研究は牛の腱を用いた基礎研究であり、人での治療効果を直接証明するものではありません。

そのため、Tenexを受ける際には、経験のある医師が、患者さんの状態に合わせて適応を慎重に判断することが重要です。

 

 

 

 

長引く腱の痛みでお困りの方へ

肘、肩、膝、アキレス腱、足底などの痛みが長引いている場合、原因が慢性腱障害である可能性があります。

「湿布や薬を続けているが良くならない」
「注射をしてもすぐに痛みが戻る」
「リハビリをしているが改善が乏しい」
「手術まではしたくないが、痛みを何とかしたい」
「スポーツや仕事に早く復帰したい」

このような方は、一度、腱の状態を詳しく評価することが重要です。

はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、運動器エコーを用いて腱の状態を丁寧に確認し、Tenex治療を含めた適切な治療選択肢を提案します。

Tenexの実施実績が豊富なクリニックとして、患者さんが安心して治療を受けられるよう、診断から治療、リハビリまで一貫してサポートします。

長引く腱の痛みでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。

リンク:はせがわ整形外科運動器エコークリニック