「もう何年も肩が痛い」「一度良くなったと思ったのに、まだ引っかかる感じがする」——四十肩・五十肩(肩関節周囲炎、医学的には「凍結肩」)は自然に治ると言われることが多い病気ですが、実際にはどのくらいの期間で、どの程度まで回復するのでしょうか。今回ご紹介するのは、平均7年という長期間にわたって患者さんを追跡した貴重な研究です。手術をせずに治療を受けた凍結肩の患者さんが、その後どのような経過をたどったのかを知ることは、今まさに肩の痛みで悩んでいる方にとって大きな道しるべになります。

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凍結肩とはどのような病気か

凍結肩は、肩関節を包んでいる「関節包」という組織に炎症が起こり、次第に縮んで硬くなってしまう病気です。はっきりとした原因がわからないまま発症することが多く、痛みが先行する時期、動きが固まっていく時期、少しずつほぐれていく時期という経過をたどるとされています。「そのうち自然に治る」というイメージを持たれがちですが、今回の研究は、その「自然に治る」という前提そのものを長期データで検証した点に価値があります

 

 

研究の内容と対象患者

この研究では、手術を受けずに保存的治療(薬物療法や運動療法など)を行った凍結肩の患者62人、68肩を対象に、治療から2年2か月〜11年9か月後(平均で約7年後)まで追跡調査を行いました。単に「痛みが取れたかどうか」だけでなく、実際に肩がどれくらい動くようになったかを、健康な反対側の肩と比較しながら客観的に評価している点が特徴です。長期間にわたってここまで丁寧に経過を追った研究は、当時としても非常に珍しいものでした。

 

 

長期経過後もみられた症状

追跡調査の結果、患者さんの半数にあたる31人(50パーセント)が、経過後も軽度の痛みや肩のこわばりを感じ続けていたことが報告されました。関節の動きについても、健康な反対側の肩と比べると、37人(60パーセント)に何らかの動きの制限が残っていました。特に外から見て分かりにくい「肩を外側にひねる動き(外旋)」の制限が目立ち、日常生活の中で腕を後ろに回す、髪を洗うといった動作のしづらさとして残ることがあると考えられます。片側だけに症状があった37人を対象に、健康な側の肩と直接比較した場合でも、11人(30パーセント)に制限が確認されました。

 

 

この結果が意味すること

この研究が伝える重要なメッセージは、凍結肩は「いつか自然に、完全に治る」と単純には言い切れない病気だということです。痛みのピークを越えたからといって安心してよいわけではなく、動きの制限が数年単位で残ってしまう方が一定数存在します。だからこそ、痛みが強い急性期の対応だけでなく、その後の可動域を維持・改善していくための継続的な運動療法や、炎症の原因を的確に見極めた治療が、長期的な後遺症を減らすうえで大切になります。放置して様子を見続けることは、回復のタイミングを逃すリスクにもつながりかねません。

 

 

当院での肩の痛みへの取り組み

はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、四十肩・五十肩を含む肩の痛みに対して、レントゲンだけでは分かりにくい腱板や関節包、滑液包などの軟部組織の状態を、運動器エコー(超音波)でリアルタイムに観察しながら評価しています。どの組織に炎症や癒着が起きているのかを把握したうえで、症状の時期に応じた保存療法を行い、必要な場合にはエコーガイド下での的確な注射治療(ハイドロリリースなど)にもつなげることができます。

肩の痛み・こわばりについて(はせがわ整形外科運動器エコークリニック)
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ハイドロリリース注射について
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まとめ

今回ご紹介した研究からは、凍結肩を保存的に治療した場合でも、平均7年という長期経過の後に半数近くの方に痛みやこわばりが、6割の方に何らかの動きの制限が残っていたことが分かりました。四十肩・五十肩は「様子を見ていれば治る」病気と思われがちですが、放置せず早めに適切な評価と治療を受けることが、長期的な機能の維持につながります。肩の痛みや動かしにくさが続いている方は、一度専門医にご相談ください。

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参考文献
Shaffer B, Tibone JE, Kerlan RK. Frozen shoulder. A long-term follow-up. The Journal of Bone and Joint Surgery. American Volume. 1992;74(5):738-746.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/1624489/

 

【執筆者】
はせがわ整形外科運動器エコークリニック
院長 長谷川 英雄(https://medicalnote.jp/doctors/251104-001-DB)

奈良県立医科大学医学部卒業。日本整形外科学会専門医・日本手外科学会専門医(医学博士)。手外科・運動器エコー診療を専門とし、国内外で研究・教育活動にも従事。チェンマイ大学医学部(タイ)派遣研究員、サン・ロッククリニック(フランス)留学、IRCAD台湾・IRCADストラスブール招聘講師を歴任。日本整形外科超音波学会評議員、Journal of Orthopaedic ScienceおよびJournal of Medicine and Urban Health査読委員など。