手のしびれや痛みを訴えて整形外科を受診される患者さんの中で、手根管症候群は非常に頻度の高い疾患です。
しかし「実際にどれくらい多い病気なのか」を正確なデータで知る機会は多くありません。
今回は、2024年に国際医学誌 Musculoskeletal Care に掲載された、手根管症候群の有病率を世界規模で解析した最新のシステマティックレビューおよびメタ解析論文をもとに、一般の方にもわかりやすく解説します

研究の概要
この研究は、2012年以降に発表された手根管症候群の有病率に関する研究を体系的に収集し、統計学的に統合したものです。
対象となった論文は31研究、解析対象となった人数は5,311,785人にのぼります。
アメリカ、ヨーロッパ諸国、アジア、中東、アフリカ、南米など15か国のデータが含まれており、非常に規模の大きい解析です。
研究はPRISMAガイドラインに準拠して行われており、バイアス評価も含めた信頼性の高い手法が用いられています
手根管症候群の世界全体での頻度
本研究で示された、手根管症候群の世界全体の有病率は約14.4%でした。
これは統計学的に見ると、世界中でおよそ7人に1人が手根管症候群を経験する可能性があることを意味します。
研究間では0.3%から74%まで幅がありましたが、これは対象となった集団や職業、診断基準の違いによるものと考えられています
高所得国と中低所得国の違い
国の経済水準によっても、有病率には差が認められました。
高所得国では手根管症候群の有病率は16.9%、一方で中低所得国では11.4%でした。
高所得国で頻度が高い理由として、デスクワークや反復的な手作業が多い職業環境、診断体制が整っていることなどが指摘されています
地域別にみた手根管症候群の有病率
大陸別に解析した結果も報告されています。
ヨーロッパでは約45.2%と最も高い有病率が示されました。
北米では16.4%、アジアでは12.1%、アフリカでは7.9%、南米では7.1%でした。
特にヨーロッパで高値となった背景には、特定の職業集団を対象とした研究が多く含まれている点が影響していると考察されています。
なぜ手根管症候群は多いのか
論文では、手根管症候群の発症に関与する要因として以下が挙げられています。
長時間のキーボード操作やスマートフォン使用、反復的な手の動作を伴う仕事、妊娠やホルモン変化、糖尿病や肥満、加齢、女性であることなどです。
現代の生活様式そのものが、手根管症候群を発症しやすい環境になっていることが示唆されています。
この研究からわかる重要なポイント
この研究が示している最も重要な点は、手根管症候群が決して珍しい病気ではないということです。
しびれや痛みを我慢して放置すると、神経障害が進行し、回復に時間がかかることがあります。
一方で、早期に診断し、適切な治療を行えば、保存療法で改善が期待できるケースも少なくありません。
症状の程度に応じて、装具療法、注射、リハビリテーション、手術などを選択することが重要です。
まとめ
手根管症候群は世界的に非常に多い疾患であり、世界全体で約14%の人が影響を受ける可能性があります。
デスクワークや反復動作の増加により、今後も患者数は増えると考えられます。
手のしびれや違和感が続く場合は、自己判断せず、早めに手外科専門医を受診することが大切です。当院ではエコーを使った診断から手術まで専門的な治療を提供しております。気になる症状があれば、まずは当院へお越しください。





