参考文献

Bonczar M, Ostrowski P, Dziedzic M, Kasprzyk M, Obuchowicz R, Zacharias T, Marchewka J, Walocha J, Koziej M. Evaluation of lateral epicondylopathy, posterior interosseous nerve compression, and plica syndrome as co-existing causes of chronic tennis elbow. International Orthopaedics. 2023;47:1787-1795.

 

 

「テニス肘(外側上顆炎)と診断されて治療を受けているのに、なかなか良くならない」

このような患者さんは少なくありません。

 

 

実際に当院にも、他院で長期間治療を受けたものの改善せず、セカンドオピニオンとして来院される患者さんが多くいらっしゃいます。

今回ご紹介する論文は、慢性的なテニス肘の患者さんの中に、実は別の病気が隠れている可能性を示した非常に興味深い研究です。

この研究を読むと、**「テニス肘が治らないのではなく、そもそも診断が不十分だった可能性がある」**ことが理解できます。

当院が重視している「運動器エコーを用いた精密診断」の重要性を裏付ける内容でもあります。

 

 

 

テニス肘(外側上顆炎)とは?

テニス肘は、肘の外側にある伸筋群腱付着部に生じる腱障害です。

特に短橈側手根伸筋(ECRB)が障害されることが多く、

・物を持ち上げる

・ドアノブを回す

・雑巾を絞る

・パソコン作業

・スポーツ

などで痛みが出現します。

一般人口の約1~3%に発症するとされる非常に頻度の高い疾患です。

しかし実際には、肘の外側の痛みの原因は一つではありません。

 

 

 

この研究の目的

研究者らは、

「慢性テニス肘と診断されている患者の中に、後骨間神経障害(PIN症候群)や滑膜ヒダ症候群(Plica Syndrome)が隠れているのではないか」

という仮説を検証しました。

慢性的な肘外側痛を訴える31名を対象に、

・外側上顆炎

・後骨間神経絞扼

・滑膜ヒダ症候群

の3つについて超音波検査を用いて詳細に評価しています。

 

 

驚きの結果:約4割に複数の原因が存在した

研究結果は非常に衝撃的でした。

31名中13名(40.7%)で、肘外側痛の原因が1つではありませんでした。

内訳は、

・外側上顆炎+後骨間神経障害:18.8%

・外側上顆炎+滑膜ヒダ症候群:6.3%

・外側上顆炎+後骨間神経障害+滑膜ヒダ症候群:15.6%

でした。

つまり、

慢性テニス肘患者の約半数では、実際には別の病気が同時に存在していた

のです。

これでは、外側上顆炎だけを治療しても十分な改善が得られないのは当然かもしれません。

 

 

後骨間神経障害(PIN症候群)とは?

後骨間神経は橈骨神経の枝であり、前腕の回外筋(Supinator)の中を通ります。

特に「Frohseアーケード」と呼ばれる線維性アーチで圧迫されやすいことが知られています。

 

 

症状はテニス肘と非常によく似ています。

・肘外側の痛み

・物を持つと痛い

・前腕のだるさ

・握力低下

などがみられます。

そのため、

外側上顆炎と誤診されやすい代表的疾患

です。

今回の研究では、PIN症候群患者では神経径が有意に太くなっており、超音波検査によって診断可能であることが示されました。

 

 

 

滑膜ヒダ症候群(Plica Syndrome)とは?

肘関節内には滑膜ヒダ(Plica)と呼ばれる正常構造があります。

この滑膜ヒダが炎症や線維化を起こすと痛みの原因になります。

特徴として、

・肘外側痛

・クリック音

・引っ掛かり感

・動作時痛

などがあります。

今回の研究では、

・浮腫

・線維化

・血流増加

・骨との衝突

が症候性Plicaで有意に多く認められました。

興味深いことに、単純にヒダの厚さだけでは診断できないことも示されています。

つまり、

MRIやレントゲンだけでは見逃される可能性がある

ということです。

 

 

 

痛みが強い患者ほど複数の病気を持っている可能性がある

研究ではPRTEEスコアとQuickDASHスコアも評価されています。

結果として、

痛みや機能障害が強い患者ほど、複数の病態を併存している傾向がありました。

これは診療現場でも非常によく経験します。

「どこへ行っても治らない」

「注射を何回打っても改善しない」

「リハビリしても良くならない」

という患者さんでは、

実際には

・腱障害

・神経障害

・関節内病変

が同時に存在していることがあります。

 

 

 

なぜ運動器エコーが重要なのか

この研究の結論は非常にシンプルです。

肘外側痛は一つの病気として考えてはいけない

ということです。

診察だけでは、

・外側上顆炎

・後骨間神経障害

・滑膜ヒダ症候群

を完全に区別することは困難です。

そこで重要になるのが運動器エコーです。

運動器エコーは、

・腱の変性

・炎症

・血流

・神経の腫大

・神経の圧迫

・関節内滑膜ヒダ

・動的評価

をリアルタイムで観察できます。

さらに患者さん自身が画面を見ながら病態を理解できるため、治療方針の共有もしやすくなります。

 

 

 

はせがわ整形外科運動器エコークリニックの特徴

当院では院名にもあるように、運動器エコーを診療の中心に据えています。

診察時には医師がエコーを行い、

・腱

・靱帯

・神経

・関節

・筋肉

をその場で評価します。

さらに当院の大きな特徴は、

整形外科医と理学療法士(PT)がエコー画像を共有しながら治療を進めることです。

従来のリハビリは「症状に対する治療」が中心でした。

しかし当院では、

「どの組織が痛みを出しているのか」をエコーで可視化した上で、医師とPTが連携しながら治療戦略を立案します。

これはまさに新世代の運動器診療といえるでしょう。

外側上顆炎であれば腱の状態を評価し、

後骨間神経障害であれば神経の圧迫部位を確認し、

滑膜ヒダ症候群であれば関節内病変を評価します。

原因に応じて、

・リハビリテーション

・超音波ガイド下注射

・PRP治療

・体外衝撃波治療

・手術治療

を適切に選択します。

当院の診療内容については下記をご覧ください。

はせがわ整形外科運動器エコークリニック公式ホームページ

 

 

まとめ

今回の研究では、慢性テニス肘患者の40.7%に複数の病態が存在していることが示されました。

特に、

外側上顆炎だけではなく、後骨間神経障害や滑膜ヒダ症候群が隠れている可能性がある

ことは重要なメッセージです。

もし、

・テニス肘がなかなか治らない

・注射を繰り返している

・リハビリをしても改善しない

・手術を勧められたが不安

という方は、一度診断を見直す価値があります。

はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、運動器エコーを用いた精密診断と、医師・理学療法士が連携した包括的な治療を行っています。

肘の痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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