参考文献:Kimura H, Suda M, Kobayashi T, Suzuki S, Fukui S, Obata H. Effectiveness of ultrasound-guided fascia hydrorelease on the coracohumeral ligament in patients with global limitation of the shoulder range of motion: a pilot study. Scientific Reports. 2022;12:19782. DOI: 10.1038/s41598-022-23362-y.

 

肩が上がらない、後ろに回らない、服を着るときに痛い。そのような症状でお困りではありませんか。

いわゆる「五十肩」「凍結肩」「肩関節周囲炎」は、肩の痛みだけでなく、肩の動きが大きく制限される病気です。時間がたてば自然に治ると思われがちですが、実際には痛みや可動域制限が長く続き、日常生活に支障をきたすことがあります。

今回紹介する論文では、肩の動きが全体的に制限された患者さんに対して、エコーで烏口上腕靱帯を確認しながら行うハイドロリリースが、肩の可動域改善に役立つ可能性が報告されています。

肩が動きにくい原因を「なんとなく五十肩」として終わらせるのではなく、エコーでどこに問題があるのかを評価することが、これからの整形外科診療では重要です。

はせがわ整形外科運動器エコークリニック
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では、クリニック名の通り、運動器エコーを用いた診断と治療を専門的に行っています。肩の痛み、動きにくさ、長引く五十肩でお困りの方は、最新のエコーを使った整形外科診療を受けられる当院へご相談ください。

 

 

五十肩は「関節包」だけの問題ではない

五十肩は、医学的には凍結肩や癒着性関節包炎と呼ばれることがあります。

従来は、肩関節の袋である「関節包」が硬くなる病気として説明されることが多くありました。しかし近年では、肩関節の周囲にある靱帯、滑液包、腱、筋肉、筋膜などを含めた軟部組織全体の問題として考えられるようになっています。

この論文でも、五十肩では関節包だけでなく、烏口上腕靱帯、肩峰下滑液包、棘上筋腱、肩甲下筋など周囲組織にも炎症や線維化が関係する可能性が述べられています。

つまり、五十肩は単なる「肩の炎症」ではなく、肩の周囲の組織が硬くなり、滑りが悪くなることで動きが制限される病態と考えることができます。

このような軟部組織の変化は、レントゲンだけでは十分に評価できません。骨の形や関節の変形を見るにはレントゲンが重要ですが、靱帯、腱、滑液包、筋膜の状態を細かく見るにはエコーが非常に有用です。

 

 

 

烏口上腕靱帯とは何か

今回の論文で注目されているのが、烏口上腕靱帯です。

烏口上腕靱帯は、肩甲骨の烏口突起という部分から上腕骨に向かって走る靱帯です。肩の前方から上方にかけて存在し、肩関節の安定性や動きに関係しています。

五十肩では、この烏口上腕靱帯が硬くなったり厚くなったりすることが、肩の動きの制限に関係すると考えられています。特に外旋、つまり腕を外側に開く動きが制限される場合、烏口上腕靱帯の硬さが関係している可能性があります。

論文では、烏口上腕靱帯の変化が五十肩において重要な役割を持つ可能性があること、そして関節鏡手術で烏口上腕靱帯を切離すると可動域改善に関係することが紹介されています。

手術で切離されることもある重要な靱帯を、エコーで確認しながら低侵襲に治療対象とするという点が、この研究の大きなポイントです。

 

 

 

エコーガイド下ハイドロリリースとは

エコーガイド下ハイドロリリースとは、エコーで神経、筋膜、靱帯、腱、血管などを確認しながら、少量の液体を注入して組織の滑走性を改善することを目的とした治療です。

今回の論文では、烏口上腕靱帯に対して、エコーで針先を確認しながら2mLの生理食塩水を注入しています。針先の位置を常にエコーで確認し、烏口上腕靱帯の部分に正確に注入する方法が用いられました。

ここで重要なのは、単に「注射をする」のではないということです。

エコーガイド下注射の本質は、見えない場所に勘で注射するのではなく、問題となる組織と針先をリアルタイムに確認しながら、安全性と正確性を高めることにあります。

肩の周囲には、腱、神経、血管、滑液包など多くの重要な構造があります。そのため、正確なエコー技術を持つ医師が評価し、必要な場所に適切に治療を行うことが大切です。

 

 

 

この論文ではどのような患者さんが対象になったのか

この研究は、肩の動きが全体的に制限された成人患者さんを対象にした前向き単群介入研究です。

対象は、片側の肩に持続する全方向性の可動域制限がある患者さんで、臨床的に凍結肩と診断された方です。研究では、17名が候補となり、最終的に11名が解析対象となりました。

除外されたのは、エコーで肩峰下滑液包炎や石灰沈着性腱炎が確認された患者さんです。つまり、単純に肩が痛い患者さん全員に行った研究ではなく、エコーを使って他の病態を確認したうえで、肩の全体的な可動域制限がある患者さんに絞って行われています。

この点は非常に重要です。肩の痛みには、五十肩だけでなく、腱板損傷、石灰沈着性腱炎、滑液包炎、インピンジメント、頚椎由来の痛みなど、さまざまな原因があります。

そのため、治療の前に正確な診断が必要です。

 

 

 

研究結果:肩の可動域が改善

この研究では、1回目のエコーガイド下ハイドロリリース後に、肩の外旋可動域が中央値で7.1度改善しました。また、屈曲、伸展、外転、外旋、内旋といった複数の方向で可動域の改善が認められました。

さらに、2回目のハイドロリリースとリハビリを組み合わせた後も、可動域改善が維持・追加される傾向が示されています。

これは、烏口上腕靱帯という一つの組織にアプローチしているにもかかわらず、肩全体の動きが改善した可能性を示しています。

肩の動きは一つの関節だけで決まるのではなく、靱帯、腱、筋肉、筋膜、滑液包などが連動して生まれます。エコーでこれらの組織を評価し、必要な場所に治療を行うことが重要です。

 

 

 

痛みへの効果はどうだったのか

この研究では、安静時の痛みについては有意な改善は認められませんでした。一方で、最大外旋時、つまり肩を外に開いたときの痛みは改善傾向を示しました。また、肩の痛みと日常生活障害を評価するSPADIスコアは中央値で13.4点改善しました。

この結果から考えると、烏口上腕靱帯へのエコーガイド下ハイドロリリースは、じっとしているときの痛みを劇的に取る治療というよりも、動かしたときの痛みや肩の使いにくさを改善する可能性がある治療と考えるのが自然です。

五十肩の治療では、痛みを取るだけでなく、「動かせる肩」を取り戻すことが非常に重要です。

痛みが少し落ち着いても、肩の動きが悪いままだと、服を着る、髪を洗う、背中に手を回す、棚の物を取るといった日常生活動作に支障が残ります。

 

 

 

安全性について

この研究では、注射部位の痛み、皮下出血、神経損傷などの有害事象は認められませんでした。

ただし、この研究は11名を対象とした小規模なパイロット研究です。そのため、「必ず安全」「必ず効果がある」と断定することはできません。論文の結論でも、今後はより多くの患者さんを対象にした比較試験や長期的な評価が必要であると述べられています。

大切なのは、論文の結果を過大評価せず、患者さん一人ひとりの状態を診察・エコー・必要に応じた画像検査で評価したうえで、適切な治療を選択することです。

 

 

 

なぜエコーが五十肩診療で重要なのか

五十肩と診断されていても、実際には別の病気が隠れていることがあります。

たとえば、腱板損傷、石灰沈着性腱炎、肩峰下滑液包炎、上腕二頭筋長頭腱炎、変形性肩関節症、頚椎由来の神経症状などです。

レントゲンでは骨の状態は分かりますが、腱、靱帯、滑液包、筋膜、炎症の状態は十分に見えません。一方、エコーでは、肩を動かしながら腱や滑液包の状態を観察することができます。

エコーの強みは、診察室でその場で軟部組織を確認できること、動かしながら評価できること、必要に応じてそのままエコーガイド下治療につなげられることです。

五十肩と一言で言っても、炎症が強い時期、硬さが主体の時期、リハビリを進めるべき時期、注射を検討すべき時期は異なります。エコーを使うことで、より状態に合った治療方針を立てやすくなります。

 

 

 

リハビリとの組み合わせが重要

今回の論文では、2回目のハイドロリリース後に、主に外旋可動域訓練を中心としたリハビリが行われています。

これは臨床的にも非常に重要です。

注射やハイドロリリースで組織の滑りや痛みが改善しても、その後に正しいリハビリを行わなければ、十分な機能改善につながらないことがあります。

五十肩の治療では、「注射だけ」「リハビリだけ」ではなく、診断、痛みのコントロール、可動域改善、運動療法を組み合わせることが大切です。

はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、エコーを用いた評価と治療に加えて、運動器リハビリテーションを組み合わせ、患者さんの状態に応じた治療方針を提案しています。

 

 

 

エコーガイド下治療は「どこに打つか」が重要

肩の注射と聞くと、どれも同じように感じるかもしれません。

しかし、実際には注射の目的によって狙う場所は大きく異なります。肩関節内、肩峰下滑液包、腱周囲、烏口上腕靱帯周囲、上腕二頭筋長頭腱周囲など、病態によって治療ターゲットは変わります。

エコーガイド下治療で重要なのは、「肩に注射すること」ではなく、「どの組織に問題があり、どこを治療ターゲットにするか」を見極めることです。

そのためには、エコー画像を読む力、肩の解剖を理解する力、診察所見と画像所見を結びつける力が必要です。

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では、運動器エコーを活用し、肩・手・膝・足などの痛みに対して、より正確な診断と治療を目指しています。

 

 

 

この論文から患者さんに伝えたいこと

今回の論文から分かる重要なポイントは、五十肩の治療において、烏口上腕靱帯や周囲のファシアを治療ターゲットとして考える意義があるということです。

もちろん、この研究は小規模なパイロット研究であり、すべての五十肩患者さんに同じ治療が必要という意味ではありません。

しかし、肩が動かない原因を「年齢のせい」「そのうち治る」「五十肩だから仕方ない」と片づけるのではなく、エコーで肩の状態を詳しく評価し、必要に応じてエコーガイド下治療やリハビリを組み合わせることは、非常に重要です。

長引く肩の痛みや可動域制限で困っている方は、自己判断で放置せず、運動器エコーに対応した整形外科で評価を受けることをおすすめします。

 

 

 

こんな症状がある方はご相談ください

  • 肩が痛くて腕が上がらない
  • 服を着るときに肩が痛い
  • 夜間に肩が痛む
  • 髪を洗う動作がつらい
  • 背中に手が回らない
  • リハビリをしているがなかなか改善しない
  • 注射を受けたが効果が長続きしない
  • 五十肩と言われたが、本当にそうなのか詳しく調べたい

このような症状がある場合、肩関節周囲のどの組織が痛みや動きの制限に関係しているのかを評価することが大切です。

 

 

 

はせがわ整形外科運動器エコークリニックでできること

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では、名前の通り、運動器エコーを用いた整形外科診療を専門的に行っています。

肩の痛みに対しては、レントゲンだけでなく、エコーを用いて腱、靱帯、滑液包、筋膜などの軟部組織を評価します。必要に応じて、エコーガイド下注射、ハイドロリリース、リハビリテーションを組み合わせて治療を行います。

「五十肩と言われたけれど、なかなか治らない」「肩の動きが戻らない」「最新のエコーを使った整形外科診療を受けたい」という方は、当院へご相談ください。

エコーを使うことで、痛みの原因により近づき、より正確で安全性に配慮した治療を行うことができます。

肩の痛みや動きにくさでお困りの方は、はせがわ整形外科運動器エコークリニックまでお気軽にご相談ください。