大腿骨近位部骨折(大腿骨頸部骨折・大腿骨転子部骨折)の手術を受けた後、「骨折は治ったから、もう通院しなくても大丈夫」と考えていませんか?

実は、大腿骨近位部骨折の手術が終わっても、骨折の原因となった骨粗しょう症が治ったわけではありません。

骨粗しょう症を治療しないまま生活していると、反対側の股関節や背骨などに新たな骨折を起こす危険性があります。

2025年11月6日に国際医学誌『Nature Reviews Rheumatology』でオンライン公開された論文では、大腿骨近位部骨折後の骨粗しょう症治療が、高齢者の再骨折予防において極めて重要であることが強調されています。

大腿骨近位部骨折の手術を受けた方は、退院後も骨粗しょう症治療を継続することが大切です。

大阪市平野区のはせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、大腿骨近位部骨折の術後患者さんの骨粗しょう症治療についてもご相談いただけます。

今回は、最新の医学論文をもとに、なぜ手術後も骨粗しょう症治療が必要なのか、治療によってどのような効果が期待できるのかを解説します。

 

 

 

大腿骨近位部骨折は、骨粗しょう症が背景にあることが多い

大腿骨近位部骨折とは、太ももの骨である大腿骨のうち、股関節に近い部分に起こる骨折です。

高齢者では、骨粗しょう症によって骨の強度が低下していることが多く、室内での転倒など、比較的軽い外力でも骨折が生じます。

大腿骨近位部骨折を起こすと、歩行能力が低下し、長期間のリハビリテーションが必要になる場合があります。

今回の論文では、大腿骨近位部骨折を経験した高齢者のうち、骨折前の身体機能まで回復できる人は3分の1未満という研究結果が紹介されています。

さらに、骨折後1年間の死亡率が10.8〜23.8%と報告された国々もあります。

つまり、大腿骨近位部骨折は、単なる骨のけがではなく、その後の生活の自立や生命予後に影響する重大な疾患なのです。

このような骨折を繰り返さないために、骨粗しょう症の治療が欠かせません。

 

 

 

手術が終わっても骨粗しょう症は治っていない

大腿骨近位部骨折の手術では、人工骨頭置換術や骨接合術などによって、骨折した部位を治療します。

しかし、手術によって骨折部位が安定しても、全身の骨の強度が改善したわけではありません。

骨粗しょう症は、骨密度や骨質が低下して、骨折しやすくなる病気です。

手術を受けた大腿骨だけでなく、反対側の大腿骨や背骨、手首なども骨折する危険性があります。

特に、一度骨粗しょう症による骨折を経験した方は、再び骨折するリスクが高くなります。

今回の論文でも、**「最初の脆弱性骨折は、次の骨折を防ぐための重要な治療機会である」**という考え方が示されています。

したがって、大腿骨近位部骨折の手術後には、骨折部の経過観察だけでなく、骨粗しょう症そのものに対する治療を開始・継続する必要があります。

 

 

 

骨粗しょう症を治療しないと再骨折の危険性が高まる

大腿骨近位部骨折を経験した方は、次の骨折を起こす危険性が高い状態にあります。

今回の論文では、大腿骨近位部骨折を起こした患者さんの約半数に、それ以前の骨折歴があったことも紹介されています。

これは、以前の骨折をきっかけに骨粗しょう症治療を行うことができれば、将来の重大な骨折を予防できる可能性があることを示しています。

特に注意したいのが、反対側の大腿骨近位部骨折です。

片側の大腿骨近位部骨折を経験した後に、反対側まで骨折すると、歩行能力や日常生活動作がさらに低下する可能性があります。

背骨の圧迫骨折も、慢性的な腰背部痛、円背、身長低下などにつながることがあります。

一度目の骨折を最後の骨折にするためには、退院後の骨粗しょう症治療が非常に重要です。

 

 

 

骨粗しょう症治療によって再骨折リスクを減らせる

骨粗しょう症治療薬には、将来の骨折リスクを低下させる効果があることが、多くの研究で報告されています。

今回の論文では、骨折後の薬物治療の有効性を示す研究として、HORIZON Recurrent Fracture Trialが紹介されています。

この臨床試験では、大腿骨近位部骨折後90日以内にゾレドロン酸という骨粗しょう症治療薬の点滴を開始した患者さんを対象に、その後の経過が調べられました。

その結果、追跡期間中央値1.9年において、次の効果が報告されています。

  • 新たな臨床的骨折のリスクが35%低下

  • 全死亡リスクが28%低下

これらはゾレドロン酸を用いた臨床試験の結果であり、すべての骨粗しょう症治療薬に同じ数値が当てはまるわけではありません。

しかし、骨折後の適切な薬物治療が、再骨折予防だけでなく、患者さんの生命予後にも関係する可能性を示す重要な研究です。

骨粗しょう症治療は、単に骨密度を増やすためだけではなく、次の骨折を防ぎ、健康寿命を守るための治療なのです。

 

 

 

日本では大腿骨近位部骨折後の骨粗しょう症治療が不足している

骨粗しょう症治療の重要性が明らかになっている一方、実際には十分な治療を受けていない患者さんが多いことが問題になっています。

今回の論文では、日本において大腿骨近位部骨折後の患者さんの約80%が当初は骨粗しょう症治療を受けておらず、1年後の薬物治療継続率も約20%と紹介されています。

これらは論文が引用した既存資料に基づく数値であり、現在の日本全体の治療率を直接示すものではありません。

骨折の手術を受けた病院を退院すると、手術した部位の治療は継続されても、骨粗しょう症の検査や薬物治療が十分に引き継がれない場合があります。

また、患者さん自身が「手術が終わったから骨粗しょう症の薬は必要ない」と考えてしまうこともあります。

しかし、骨粗しょう症は長期的な管理が必要な病気です。薬を自己判断で中止すると、薬剤の種類によっては骨折リスクが再び高まることがあります。

大腿骨近位部骨折の手術を受けた方は、退院後の骨粗しょう症治療について、整形外科で相談することをおすすめします。

 

 

 

大腿骨近位部骨折の術後は、当院で骨粗しょう症治療をご相談ください

大阪市平野区のはせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、大腿骨近位部骨折の手術を受けた患者さんの骨粗しょう症治療についてもご相談をお受けしています。

大腿骨近位部骨折の手術を受けた病院で、骨粗しょう症治療を開始している場合には、その治療を適切に引き継ぎ、継続することが重要です。

一方、手術後に骨粗しょう症治療が始まっていない場合には、骨折歴や全身状態などを確認したうえで、治療の必要性を評価します。

骨粗しょう症治療では、骨密度、過去の骨折歴、年齢、腎機能、併存疾患などを考慮し、患者さんに適した薬剤を選択します。

治療薬には、ビスホスホネート製剤、デノスマブ、テリパラチドなど、さまざまな種類があります。

それぞれ作用や投与方法、注意点が異なるため、患者さんの状態に合わせた治療選択が必要です。

「大腿骨頸部骨折の手術を受けたが、骨粗しょう症の治療をしていない」「手術した病院が遠く、骨粗しょう症治療を近くの整形外科で継続したい」

このような方は、ぜひ当院にご相談ください。

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骨折後の骨粗しょう症治療を継続するFLSという考え方

今回の論文では、骨折後の治療を途切れさせないための取り組みとして、FLS(Fracture Liaison Service:骨折リエゾンサービス)が紹介されています。

FLSとは、骨折した患者さんを適切に把握し、骨粗しょう症の検査や治療、継続的なフォローアップにつなげる医療連携の仕組みです。

大腿骨近位部骨折の手術は急性期病院で行われることが多い一方、骨粗しょう症治療は退院後も長期間継続する必要があります。

そのため、手術を担当した病院と地域の整形外科クリニックの連携が重要になります。

実際に、FLSの導入によって骨粗しょう症治療の開始率が改善し、再骨折の減少につながったことが報告されています。

骨折後の骨粗しょう症治療は、手術した病院だけで完結するものではありません。地域の医療機関で継続的に治療を受けることが大切です。

当院でも、大腿骨近位部骨折の手術後に地域で骨粗しょう症治療を継続したい患者さんのご相談に対応しています。

 

 

 

骨粗しょう症治療はいつまで続ける必要がある?

骨粗しょう症治療は、短期間で終了するものとは限りません。

治療期間は、骨折リスク、骨密度の変化、使用する薬剤、患者さんの全身状態などによって異なります。

大切なのは、定期的に治療効果を確認しながら、適切な治療を継続することです。

特に大腿骨近位部骨折を経験した方は、再骨折リスクが高いため、継続的な骨粗しょう症管理が重要です。

治療薬を変更する場合にも注意が必要です。例えばデノスマブでは、中止後の骨折リスクを考慮して、その後の治療計画を立てる必要があります。

骨粗しょう症の薬は、自己判断で中断せず、必ず医師と相談して治療方針を決めましょう。

 

 

 

まとめ|大腿骨近位部骨折の手術後は当院で骨粗しょう症治療の継続を

今回の『Nature Reviews Rheumatology』の論文は、高齢者の骨折治療において、骨折後の骨粗しょう症薬物治療が重要な評価指標であることを示しています。

大腿骨近位部骨折の手術によって骨折部位が治療されても、背景にある骨粗しょう症が改善したわけではありません。

そのまま骨粗しょう症を放置すると、反対側の大腿骨や背骨などに新たな骨折を起こす危険性があります。

 

大腿骨近位部骨折の手術は治療の終わりではなく、再骨折を防ぐための骨粗しょう症治療の出発点です。

 

大阪市平野区のはせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、大腿骨近位部骨折の術後に骨粗しょう症治療を継続したい方、骨粗しょう症治療をまだ始めていない方のご相談に対応しています。

 

手術を受けた病院からの診療情報提供書や、お薬手帳、検査結果などがある場合には、受診時にお持ちいただくと治療の引き継ぎに役立ちます。

次の骨折を予防し、いつまでも自分の足で歩き続けるために、大腿骨近位部骨折の手術後は、ぜひ当院で骨粗しょう症治療をご相談ください。

 

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参考文献

  1. Chandran M, Thiyagarajan JA, Alokail M, Bruyère O, Harvey NC, Rizzoli R, Veronese N, Reginster JY. WHO benchmarks for equitable hip-fracture care and osteoporosis treatment in older people. Nature Reviews Rheumatology. 2026;22:62–70. Published online November 6, 2025.

    DOI: https://doi.org/10.1038/s41584-025-01319-5

  2. Lyles KW, Colón-Emeric CS, Magaziner JS, et al. Zoledronic acid and clinical fractures and mortality after hip fracture. New England Journal of Medicine. 2007;357:1799–1809.

    DOI: https://doi.org/10.1056/NEJMoa074941

  3. Sing CW, Lin TC, Bartholomew S, et al. Global epidemiology of hip fractures: secular trends in incidence rate, post-fracture treatment, and all-cause mortality. Journal of Bone and Mineral Research. 2023;38:1064–1075.

  4. Saito T, Sterbenz JM, Malay S, Zhong L, MacEachern MP, Chung KC. Effectiveness of anti-osteoporotic drugs to prevent secondary fragility fractures: systematic review and meta-analysis. Osteoporosis International. 2017;28:3289–3300.

  5. Javaid MK. Efficacy and efficiency of fracture liaison services to reduce the risk of recurrent osteoporotic fractures. Aging Clinical and Experimental Research. 2021;33:2061–2067.

 

【執筆者】

はせがわ整形外科運動器エコークリニック

院長 長谷川 英雄

奈良県立医科大学医学部卒業。日本整形外科学会専門医・日本手外科学会専門医(医学博士)。手外科・運動器エコー診療を専門とし、国内外で研究・教育活動にも従事。チェンマイ大学医学部(タイ)派遣研究員、サン・ロッククリニック(フランス)留学、IRCAD台湾・IRCADストラスブール招聘講師を歴任。日本整形外科超音波学会評議員、Journal of Orthopaedic ScienceおよびJournal of Medicine and Urban Health査読委員など。