参考文献
Kwon HK, Pyun SB, Cho WY, Boo CS. Carpal Tunnel Syndrome and Peripheral Polyneuropathy in Patients with End Stage Kidney Disease. J Korean Med Sci. 2011;26(9):1227-1230.
https://doi.org/10.3346/jkms.2011.26.9.1227

「最近、親指から薬指にかけてしびれる」「夜中に手が痛くて目が覚める」「細かい作業がしづらくなった」。
このような症状がある透析患者さんでは、手根管症候群を発症している可能性があります。
以前から、透析患者さんでは手根管症候群の発症率が高いことが知られていました。しかし、「なぜ起こるのか」という原因についてはさまざまな説があり、長年議論されてきました。
今回ご紹介する論文では、末期腎不全患者112名を対象に、神経伝導検査を用いて手根管症候群の発症要因を詳しく調査しています。
本記事では、この研究結果をもとに、透析患者さんにみられる手根管症候群の特徴や、適切な診断・治療についてわかりやすく解説します。
手根管症候群とは?
手根管症候群とは、手首にある「手根管」というトンネルの中で正中神経が圧迫されることで起こる病気です。
代表的な症状には以下があります。
・親指・人差し指・中指・薬指のしびれ
・夜間から明け方に悪化する痛み
・ボタン掛けや箸が使いにくい
・親指の筋力低下
・物を落としやすくなる
進行すると神経障害が回復しにくくなるため、早期診断・早期治療が非常に重要です。
透析患者さんで手根管症候群が多い理由
これまで、透析患者さんで手根管症候群が多い理由として、次のような説が考えられてきました。
・β2ミクログロブリンアミロイドの沈着
・シャント(動静脈瘻)の影響
・長期間の透析
・末梢神経障害
しかし、それらが本当に原因なのかは十分に証明されていませんでした。
この研究では何を調べたのか
研究では、112名の末期腎不全患者を対象に調査が行われました。
対象は
・血液透析患者64名
・腹膜透析患者48名
でした。
さらに神経伝導検査を行い、手根管症候群と末梢神経障害を区別しながら評価した点が、この研究の大きな特徴です。
症状だけではなく客観的な神経検査を用いて診断したため、信頼性の高い研究と考えられます。
研究結果からわかったこと
最も重要な結果は、これまで原因と考えられていた要因との関連が明確ではなかったことです。
研究では
・血液透析と腹膜透析で発症率に差はない
・シャント側の腕だから発症しやすいわけではない
・透析期間が長いほど増えるとはいえない
・β2ミクログロブリン値との関連も認められない
という結果でした。
つまり、「長く透析しているから必ず手根管症候群になる」という単純なものではないことが示されたのです。
本当に重要なのは正確な診断
透析患者さんでは、手根管症候群だけではなく「尿毒症性末梢神経障害」が同時に存在することがあります。
どちらも
・しびれ
・痛み
・感覚障害
を起こすため、症状だけでは区別が困難です。
論文でも、症状と神経伝導検査の結果が一致しない患者さんが一定数存在していました。
そのため、「透析をしているから仕方ない」と考えるのではなく、神経の状態を正確に評価することが重要です。
エコー検査が診断に役立つ理由
近年では、超音波(エコー)検査によって正中神経の腫れや圧迫状態をリアルタイムで確認できます。
エコー検査には
・痛みがない
・放射線被ばくがない
・短時間で検査できる
・神経や腱を直接観察できる
というメリットがあります。
神経伝導検査と組み合わせることで、より正確な診断につながります。
手根管症候群は手術で改善が期待できます
保存療法で改善しない場合や神経障害が進行している場合は、手術が勧められます。
現在では、エコー技術の進歩により、エコーガイド下手根管開放術という低侵襲な治療が行われています。
小さな傷で治療でき、周囲の神経や血管を確認しながら手術を進められるため、身体への負担を抑えられることが特徴です。
しびれが長期間続くと神経の回復が難しくなるため、適切なタイミングで治療を受けることが大切です。
はせがわ整形外科運動器エコークリニックで受けられる治療
はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、手外科専門医が手根管症候群に対するエコーガイド下手術を提供しています。
診察では超音波検査を活用し、神経の状態を詳しく確認したうえで、一人ひとりに最適な治療方針をご提案しています。
「透析をしているから仕方ない」「年齢のせいだから我慢するしかない」と考える必要はありません。
症状の原因を正確に診断し、適切な治療につなげることが重要です。
手根管症候群や手のしびれでお困りの方は、はせがわ整形外科運動器エコークリニックのホームページをご覧ください。
まとめ
今回ご紹介した研究では、透析患者さんの手根管症候群は、シャントや透析期間、β2ミクログロブリンだけでは説明できないことが示されました。
一方で、透析患者さんでは末梢神経障害が合併しやすく、手根管症候群との見分けが難しいため、正確な診断が欠かせません。
手のしびれや夜間の痛み、親指の力が入りにくい症状がある場合は、早めに整形外科を受診することをおすすめします。
早期診断・早期治療によって、症状の改善や日常生活の質の向上が期待できます。
はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは、手外科専門医による診療とエコーを活用した精密診断、さらにエコーガイド下手術まで一貫して対応しています。
詳しくはホームページをご覧ください。
【執筆者】
はせがわ整形外科運動器エコークリニック
院長 長谷川 英雄
奈良県立医科大学医学部卒業。日本整形外科学会専門医・日本手外科学会専門医(医学博士)。手外科・運動器エコー診療を専門とし、国内外で研究・教育活動にも従事。チェンマイ大学医学部(タイ)派遣研究員、サン・ロッククリニック(フランス)留学、IRCAD台湾・IRCADストラスブール招聘講師を歴任。日本整形外科超音波学会評議員、Journal of Orthopaedic ScienceおよびJournal of Medicine and Urban Health査読委員など





