2022年のガイドライン

「Complex Regional Pain Syndrome: Practical Diagnostic and Treatment Guidelines, 5th Edition(2022)」

について解説します。

骨折や捻挫、手術のあとに「痛みがなかなか引かない」「腫れが続く」「皮膚の色や温度がおかしい」と感じたことはありませんか。

その症状は、CRPS(複合性局所疼痛症候群)の可能性があります。

CRPSは早期対応が非常に重要な疾患です。適切な治療を早く始めることで、慢性化を防ぐことができます。本記事では、整形外科で行うCRPSの診断と治療について、わかりやすく解説します。

 

CRPS(複合性局所疼痛症候群)とは

CRPSは、外傷や手術後に起こる「原因に比べて強すぎる痛み」が特徴の病気です。

正式名称はComplex Regional Pain Syndrome(複合性局所疼痛症候群)といいます。

主な症状は次の通りです。

・強い持続的な痛み
・軽く触れるだけで痛い(アロディニア)
・腫れが長引く
・皮膚の色が赤い、または青白い
・皮膚の温度が熱い、または冷たい
・関節が動かしにくい

痛みの原因は単なる炎症だけではなく、神経の過敏化や血流異常などが複雑に関係しています。

 

 

CRPSは早期診断が重要です

CRPSは放置すると慢性化することがあります。

「術後だから仕方ない」「そのうち治るだろう」と様子を見ることが、かえって回復を遅らせる場合があります。

整形外科では国際的に用いられている診断基準に基づいて評価を行います。

重要なのは、

・誘因に比べて不釣り合いな強い痛みが続いている
・感覚異常や皮膚温の変化、腫れ、動かしにくさなどが複数みられる
・他の病気で説明できない

といった点です。外傷後の痛みが通常より長引いている場合は、早めにご相談ください。

 

 

CRPSにはタイプがあります

CRPSは大きく2つのタイプに分かれます。

温かいタイプ(Warm型)

・皮膚が赤い
・温かい
・腫れが強い
・発症早期に多い

炎症が関与していることが多く、早期治療で改善しやすい傾向があります。

冷たいタイプ(Cold型)

・皮膚が青白い
・冷たい
・慢性化しやすい

発症から時間が経過しているケースに多く、より積極的な治療が必要になります。

タイプによって治療方針が変わるため、正確な評価が重要です。

 

 

整形外科でのCRPS治療の流れ

1.診断と同時にリハビリ開始

現在の治療の中心は「機能回復」です。

以前は安静がすすめられることもありましたが、現在は早期からの適切な運動が推奨されています。

・やさしい可動域運動
・鏡療法
・段階的な荷重訓練
・むくみの管理

強い痛みを出さない範囲で、少しずつ動かしていきます。

必要以上の固定は、かえって悪化の原因になることがあります。

 

2.痛みが強い場合の補助治療

リハビリが進まない場合には、補助的に以下の治療を併用します。

・神経障害性疼痛治療薬
・抗炎症薬
・短期間のステロイド(炎症が強い場合)
・交感神経ブロック

ブロック治療は「治すため」というより、「リハビリを進めるための時間を作る」目的で行います。

 

3.心理的サポートも重要です

CRPSでは「動かすと悪くなるのでは」という不安が強くなることがあります。

しかし、適切な方法で動かすことは回復につながります。

医学的な説明と段階的な運動により、不安の悪循環を断ち切ることが大切です。

 

 

CRPSを悪化させないために

・痛みがあっても、完全にゼロにしようとしすぎない
・長期間の固定を避ける
・自己判断で運動を中止しない
・痛みが長引く場合は早めに整形外科を受診する

CRPSは「壊れている痛み」ではなく、「神経が過敏になっている状態」です。適切な治療で改善が期待できます。

 

 

当院でのCRPS対応

当院では、

・早期診断
・超音波評価
・運動器リハビリテーション
・神経ブロック治療
・段階的な機能回復プログラム

を組み合わせ、慢性化を防ぐ治療を行っています。

骨折後や手術後の痛みが通常より長引いている方は、お気軽にご相談ください。

 

まとめ

CRPS(複合性局所疼痛症候群)は、早期発見と早期リハビリが最も重要な疾患です。

「なかなか治らない痛み」は我慢せず、整形外科で評価を受けましょう。

早めの対応が、将来の機能回復を大きく左右します。

過去の記事(CRPS(複合性局所疼痛症候群)とは何か ―NEJM 2025年総説解説―)も参考にしてみてください。