TFCC(Triangular Fibrocartilage Complex:三角線維軟骨複合体)は、手関節尺側の安定性を担う重要な支持組織です。遠位橈尺関節(DRUJ)と尺側手根関節の安定化に関与し、軸圧負荷の約20%を分担しています。特に回内位や尺屈位では負荷が増加します。
TFCCは血流が限られており、構造も複雑であるため、損傷後の自然治癒能力は高くありません。そのため、保存療法で改善しない症例や不安定性を伴う症例では手術治療が検討されます。
今回は、TFCC損傷に対する手術をまとめた論文をご紹介します。

TFCC損傷の診断ポイント
TFCC損傷では尺側手関節痛が主訴となります。受傷機転としては、回内位での軸圧負荷が典型的です。
身体所見では以下が重要です。
・ピアノキーサイン
・遠位橈尺関節の前後方向不安定性
・尺骨窩圧痛(高い感度・特異度を有する)
MRIの感度は72~80%、特異度は77~86%と報告されていますが、偽陽性率も高く、必ず臨床所見との照合が必要です
治療アルゴリズム
急性外傷性TFCC損傷では、まず3か月間の保存療法(固定・安静)が推奨されています
手術適応となるのは以下の場合です。
・保存療法抵抗性
・持続するDRUJ不安定性
・アスリートなどの要望の高い症例
・尺骨突き上げ症候群を伴う変性断裂
TFCC損傷患者の40%以上が最終的に手術を選択するとの報告もあります。(私の日常臨床の感覚ではもう少し低い割合に思います。)
手術法の種類
オープン修復術
約3cm程度の切開を行い、TFCCを尺骨窩に縫合固定します。骨トンネルを作成し、縫合糸を通して固定する方法やアンカー固定が用いられます。確実に縫合できることから当院ではこの方法を推奨しています。
利点
・完全断裂や高度不安定例に有効
・DRUJの直接視下評価が可能
関節鏡視下修復術
侵襲が少なく、軟部組織の損傷を最小限に抑えられます。
方法としては
・inside-out法
・outside-in法
・経骨トンネル法
などがあります。
近年では結び目を作らないノットレス法も報告され、インプラント刺激症状を軽減できる可能性があります
術後成績
鏡視下修復の加重平均成績は以下の通りです。
・DASH:13%
・MMWS:89点
・職場復帰率:82%
・可動域:健側の94%
長期20年フォローでも63%が良好~優秀成績と報告されています
オープン法と鏡視下法を比較した前向き研究では、機能成績に有意差は認められていません
合併症
主な合併症は以下です。
・尺骨神経背側皮枝の刺激症状(4~36%)
・結び目による刺激
・ECU腱炎
・DRUJ不安定性の残存
ノットレス法では合併症が少ない可能性が示唆されていますが、症例数はまだ少なく今後の検討が必要です。ちなみに、これまで私が執刀した症例で「結び目による刺激」を訴えられた患者さんはおりませんでした。
まとめ
TFCC損傷は尺側手関節痛の重要な原因であり、適切な診断と治療戦略が不可欠です。保存療法に反応しない症例や不安定性を伴う症例では、鏡視下またはオープン修復術により良好な機能回復が期待できます。
TFCC損傷は適切に診断されずに放置されることもある疾患のひとつです。手首の痛みがある方は我慢せずに早めに手外科専門医を受診しましょう。
当院では手術対応も手術以外の治療法もすべて行っております。はせがわ整形外科運動器エコークリニックでは「平野区の手外科」として、手外科専門医による総合的な診察と本格的なリハビリテーションを受けられます。






