ばね指(弾発指)は、指を曲げ伸ばしするときに「カクッ」と引っかかる症状が出る疾患で、整形外科外来では非常に頻度の高い病気です。
一般的には
「使いすぎ」「加齢」「腱鞘炎」
と説明されることが多い疾患ですが、実はそれだけでは説明できないことが、近年の大規模研究によって明らかになってきました。

今回は、イギリス・オックスフォード大学の研究グループが発表した、
40万人以上を対象とした最新論文をもとに、
ばね指の“本当の原因”と全身疾患との関係について、わかりやすく解説します。
ばね指は「指だけの病気」ではない
今回紹介する研究では、UK Biobankという国家規模の医療データベースを用い、
ばね指と診断され、かつ手術を受けた人:約2,250人
それ以外の人:約39万8,000人
を比較し、どの要因が「独立して」ばね指と関係しているのかを詳細に解析しています。
従来の研究と大きく違う点は、
年齢
性別
糖尿病
肥満
手根管症候群
など、互いに影響し合う因子をすべて同時に調整して解析している点です。
つまり、
「見かけの関連」ではなく、
本当に意味のあるリスク因子だけを抽出している研究です。
ばね指と強く関係していた因子
この研究で、統計学的に明確な関連が確認された因子は以下の通りです。
年齢と性別
年齢が1歳上がるごとに、ばね指のリスクは約4%上昇
女性は男性より約1.2倍ばね指になりやすい
これは従来の臨床経験とも一致します。
手根管症候群との非常に強い関連
最も強い関連を示したのが手根管症候群です。
手根管症候群がある人は
ばね指のリスクが約9.6倍
この結果は、
「手根管症候群の手術後にばね指が出やすい」という経験則を超え、
両者は共通の病態(腱や腱鞘の線維化)を持つ可能性が高い
ことを示唆しています。
デュピュイトラン拘縮との新たな関係
今回の研究で特に注目すべき新しい発見が、
デュピュイトラン拘縮との強い関連です。
デュピュイトラン拘縮がある人は
ばね指のリスクが約5倍
デュピュイトラン拘縮は、手のひらの線維組織が増殖する疾患ですが、
ばね指も同様に、腱鞘やプーリーの線維化・肥厚が本質的な病態と考えられています。
ばね指は「炎症」だけでなく、
線維化を伴う疾患であることが、より明確になりました。
糖尿病とばね指の深い関係
糖尿病とばね指の関係も、より詳しく解析されています。
糖尿病(合併症なし):リスク 約1.35倍
糖尿病(網膜症・腎症など合併症あり):約2.5倍
また、HbA1c(血糖コントロール指標)が高いほど、ばね指のリスクも上昇しました。
重要なのは、
「一時的な血糖値」よりも、
「長期間の糖尿病による組織変化」が影響している
という点です。
肥満・甲状腺機能低下症・関節リウマチ
以下も、独立したリスク因子として確認されました。
肥満(BMIが高いほどリスク上昇)
甲状腺機能低下症
関節リウマチ
一方で、
高血圧
脂質異常症
メタボリックシンドローム全体
は、独立したリスク因子ではないと結論づけられています。
この研究からわかる重要なポイント
この論文が示している最大のメッセージは、
ばね指は、単なる「使いすぎ」や「指の腱鞘炎」ではなく、
全身疾患と深く関係した病態である
ということです。
特に、
手根管症候群
デュピュイトラン拘縮
糖尿病(特に合併症あり)
関節リウマチ
甲状腺機能低下症
をお持ちの方は、
ばね指を「体からのサイン」として捉える視点が重要になります。
当院の考え方と診療への活かし方
当院では、ばね指を診察する際、
指だけを診るのではなく
全身状態や基礎疾患にも目を向ける
ことを大切にしています。
症状の背景にある要因を正しく理解することで、
保存治療の選択
注射や手術の適応
再発リスクの評価
をより適切に行うことが可能になります。
まとめ
ばね指は全身疾患と深く関係する
特に手根管症候群・糖尿病・デュピュイトラン拘縮は重要
「指の病気」ではなく「体の状態が反映される病気」
という視点が、これからのばね指診療には欠かせません。ばね指は単純なようで奥が深い病気です。手外科専門医による適切な治療をうけられることをおすすめします。当院では手外科専門医が「平野区の手外科」として治療を提供します。
他医療機関様からのご紹介も随時受け付けております。患者様に当院HPで予約をとるように促していただくだけでOKです!
当院での「切らない」ばね指治療は こちら を参照ください。
当院でのばね指手術の説明動画は こちら をご覧ください。





