ばね指(弾発指)は、指を曲げ伸ばしする際に引っかかり感や「カクッ」という現象が生じ、ときに強い痛みを伴う疾患です。
一般的には「腱鞘炎」と説明されることが多いものの、近年の病理学的研究により、単なる炎症では説明できない組織レベルの変化が明らかになっています。
本記事では、成人ばね指患者のA1プーリーに生じる組織学的変化を詳細に調べた研究をもとに、ばね指の本質と臨床的な意味について解説します。

正常なA1プーリーとばね指におけるA1プーリーの違い
本研究では、以下の検体を用いてA1プーリーを詳細に観察しています。
ばね指患者:40指
正常対照群:10指
光学顕微鏡および電子顕微鏡を用いた解析により、正常とばね指では明確な構造差が確認されました。
正常なA1プーリーの構造
正常なA1プーリーは、腱の滑走を最適化するための合理的な2層構造を有しています。
内側層
規則正しく配列した高密度のコラーゲン線維で構成され、強度と柔軟性を両立しています。
外側層
血管を含む疎な結合組織からなり、栄養供給を担います。
この構造により、屈筋腱は摩擦を最小限に抑えながらスムーズに滑走します。
ばね指におけるA1プーリーの病理学的変化
一方、ばね指患者のA1プーリーでは、3層構造へと変化していることが確認されました。
特に重要なのは、腱と直接接する最内層の変化です。
結合組織構造が不規則になる
コラーゲン線維が細く、配列が乱れる
細胞外基質の増加
軟骨様化生(chondroid metaplasia)の出現
これは、本来は靭帯様組織であるA1プーリーが、軟骨に近い性質へと変性している状態を意味します。
なぜA1プーリーは変性するのか
論文では、以下の要因がA1プーリーの変性に関与すると考察されています。
指の反復使用による慢性的負荷
腱とプーリー間の摩擦増大
局所的な圧力上昇
これらの機械的ストレスが持続することで、プーリー内の線維芽細胞が軟骨細胞様の性質を獲得し、組織の性状そのものが変化すると考えられています。
つまり、ばね指は
「一過性の炎症」ではなく、「組織変性を伴う疾患」
と捉える必要があります。
この研究から分かる臨床的に重要なポイント
ばね指は単純な腱鞘炎では説明できない
A1プーリー自体に構造的・質的変化が起きている
慢性化すると自然改善が困難になる可能性がある
これらは、保存療法・注射治療・手術治療の選択を考えるうえで極めて重要な視点です。
はせがわ整形外科運動器エコークリニックの考え方
当院では、**運動器エコー(超音波検査)**を用いて、ばね指を以下の点から評価しています。
A1プーリーの肥厚の有無
屈筋腱の滑走障害
血流シグナル増加などの炎症所見
今回紹介した研究が示すように、ばね指ではプーリーの「厚さ」だけでなく「質的変化」が問題となります。
そのため、
現在どの病期にあるのか
保存療法で改善が期待できるか
注射や手術を検討すべき段階か
を、画像で確認しながら総合的に判断することが重要です。
患者さんへのメッセージ
指の引っかかりを「よくある症状」と考えて放置していると、A1プーリーの変性が進行し、治療に時間を要することがあります。
違和感や痛みが続く場合は、早期に評価を行い、適切な治療方針を立てることが大切です。
気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
ばね指は単純なようで奥が深い病気です。手外科専門医による適切な治療をうけられることをおすすめします。当院では手外科専門医が「平野区の手外科」として治療を提供します。
他医療機関様からのご紹介も随時受け付けております。患者様に当院HPで予約をとるように促していただくだけでOKです!
当院での「切らない」ばね指治療は こちら を参照ください。
当院でのばね指手術の説明動画は こちら をご覧ください。






