デキサート vs ケナコルトを比較した臨床研究の解説
ばね指は、指の屈筋腱がA1プーリーで引っかかることで、痛みや弾発症状(カクッと引っかかる現象)が起こる一般的な疾患です。保存療法として最も広く行われているのがステロイド注射です。最近は全国的にケナコルトというステロイド薬の欠品が続いており医療現場ではかわりにデキサートといわれるステロイド薬が使われることが多いようです。

今回紹介する論文は、デキサート(デキサメタゾン)とケナコルト(トリアムシノロン)という2種類のステロイド注射を比較し、治療効果に差があるかを検証した臨床研究です。

研究の目的
本研究の主な目的は
デキサメタゾンとトリアムシノロンの注射後3か月時点での症状改善(DASHスコア)に差があるかを検証する
副次的には以下も評価しています。
6週間および3か月後の段発症状の消失率
Quinnell分類の改善
患者満足度(SVAS)
治療成功に影響する因子の解析
研究デザインと方法
対象:84名の成人患者(Quinnell grade 2以上のばね指)
ランダム化:デキサメタゾン群40名、トリアムシノロン群44名
注射方法:A1プーリー部に1%リドカインとの混合液を1.0〜1.5mL注入
評価時期:6週間後、3か月後
主要評価項目:DASHスコア
副次評価項目:弾発症状の消失率、満足度、Quinnell分類
患者の希望により2回目の注射や手術が許可されており、解析は実臨床に近い「intention to treat」で行われています。
結果のまとめ
1. 主要評価項目(DASHスコア)
3か月後のDASHスコアに有意差なし → 機能改善の程度は両群で同等
2. 弾発症状の消失率
6週間後
トリアムシノロン:22/35
デキサメタゾン:12/32 → トリアムシノロンの方が早期改善が優位
3か月後
両群に有意差なし → 最終的な治療成功率は同等
3. 患者満足度
6週間後:トリアムシノロンが有意に高い
3か月後:差なし
4. 再発率
3か月以降の再発はトリアムシノロン群で多い → 早期改善は良いが、再発しやすい可能性
5. 改善に影響する因子
6週間後
トリアムシノロン
高齢
母指の罹患
3か月後
母指の罹患
2回目の注射
臨床的な結論
トリアムシノロンは「早く効く」
6週間時点で弾発症状の改善が優位。
デキサメタゾンは「遅いが最終的な効果は同等」
3か月後には差がなくなる。
トリアムシノロンは再発が多い可能性
長期的な安定性ではデキサメタゾンが優位の可能性。
この論文のポイント
ステロイド注射は約50〜70%で症状が改善する
効果が出るまで6週間以上かかることもある
1回で改善しない場合、2回目の注射で改善する例も多い
3か月経っても改善しない場合は手術を検討
トリアムシノロンは早期改善が期待できるが再発しやすい
デキサメタゾンはゆっくり効くが長期的に安定している可能性
まとめ
ケナコルトが使えない中で困っておられる医療機関も多いと思います。患者さんも、注射を受けているのになかなか効果を感じられないという方も多いと思います。全国的に困った状況の中で、この論文の情報は興味深いものでした。デキサートのほうが長期的に安定した成績であるというデーターが実臨床の感覚とは少し乖離しているような気もしました。いずれにせよ、注射自体は効果が50-70%しかありません。侵襲の少ない腱鞘切開という選択肢が今の時代に求められているのかもしれません。
ばね指は単純なようで奥が深い病気です。手外科専門医による適切な治療をうけられることをおすすめします。当院では手外科専門医が「平野区の手外科」として治療を提供します。
他医療機関様からのご紹介も随時受け付けております。患者様に当院HPで予約をとるように促していただくだけでOKです!
当院での「切らない」ばね指治療は こちら を参照ください。
当院でのばね指手術の説明動画は こちら をご覧ください。





