3D解析で見えた「four-corner」の新しい知見
手関節の痛みや不安定性を診る際、月状骨の形態がタイプ1かタイプ2かは重要なポイントです。特にタイプ2月状骨は有鈎骨との関節面を持つため、臨床的にも痛みや変性の原因として注目されてきました。

今回紹介する研究は、タイプ1・タイプ2月状骨で「four-corner」(月状骨・有鈎骨・有頭骨・三角骨)の3D運動がどのように異なるのかを、CTベースの三次元解析で詳細に評価したものです。 これまでにない「in vivo 3Dデータ」に基づく貴重な報告です。
研究の目的
月状骨形態(タイプ1・タイプ2)によって 有鈎骨・三角骨・有頭骨の動きがどう変わるかを3Dで解析する
特に、臨床的に問題となる 月状骨–有鈎骨衝突(impaction) 月状骨–三角骨の関節運動 に注目
研究方法のポイント
健常者および対側正常手のCTデータを使用
3つの手関節運動を評価
屈曲–伸展(FEM)
橈屈–尺屈(RUD)
ダートスローイングモーション
3Dモデルを作成し、骨同士の相対運動を解析
月状骨形態はC–T距離(有頭骨–三角骨距離)で分類
3.0 mm以下 → タイプ1
3.0 mm超 → タイプ2
主な結果
1. 手関節全体の可動域
タイプ1・タイプ2で大きな差はなし。 → 手関節全体の可動域は形態差の影響を受けにくい。
2. 月状骨–三角骨の動きに大きな差
特に尺屈(RUD)で顕著。
タイプ2月状骨では 三角骨が月状骨に対してより大きく近位方向へ滑る(平均2.9 mm)
タイプ1では1.6 mmと小さい
この「近位方向への滑り」は、 月状三角靱帯(LTIL)に剪断ストレスを与える可能性があると考察されています。
→ タイプ2月状骨でLTIL損傷が多い臨床所見と一致
3. 月状骨–有鈎骨距離
タイプ2月状骨では、 尺屈・尺屈+屈曲で有鈎骨とほぼ接触(0.4〜0.6 mm) → 反復動作で有鈎骨近位極の関節症を起こしやすい
屈曲–伸展では距離が保たれており、 衝突が起きるのは主に尺屈方向の動きであることが明確に。
4. Four-cornerの回旋方向
有頭骨・有鈎骨・三角骨は タイプ1・2ともに同じ方向へ回旋
三角骨の回旋量は有頭骨の約1/3
手根骨間関節の寄与率もタイプ差なし
→ 運動方向は同じだが、滑り量(shear)がタイプ2で大きい
臨床的示唆
1. タイプ2月状骨は月状三角靱帯損傷のリスクが高い
三角骨の「近位方向への大きな滑り」が剪断力を増加
月状骨–三角骨の融合術などの術後可動域制限にも影響する可能性
2. 有鈎骨近位極の関節症が起こりやすい
尺屈・尺屈+屈曲で月状骨と接触
反復動作で痛みや変性を誘発しやすい
3. タイプ1・2で手関節全体の可動域は変わらない
→ 痛みの原因は「可動域の差」ではなく 局所的な骨間運動の違いにある
まとめ
この研究は、タイプ2月状骨における
月状骨–三角骨間の大きな剪断運動
月状骨–有鈎骨衝突の起こりやすさ
を3Dで明確に示した点で非常に価値があります。
臨床では、
尺屈での疼痛
月状三角靱帯損傷疑い
有鈎骨近位極の変性 などが見られる場合、タイプ2月状骨の存在を強く意識すべきです。
手関節痛の診断精度を高めるうえで、 月状骨形態の理解は欠かせない要素であると再確認できる内容でした。前回の記事(https://hasegawaseikei.com/2025/12/21/561/)に引き続きSTT関節症のマニアックな内容でした。
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