PIP関節(近位指節間関節)の掌側板損傷は、スポーツ外傷や日常生活での過伸展によって生じることが多く、整形外科領域で注目される疾患のひとつです。本記事では、掌側板の解剖学的特徴から損傷のメカニズム、最新の治療法までを網羅的に解説します。
掌側板の解剖学的・機能的特徴
掌側板(volar plate)は、PIP関節の掌側に位置し、関節の過伸展を防ぐ線維性構造です。
近位縁からはチェックレインリガメント(手綱靭帯)が2本連なり、過伸展制御に寄与します。
関節運動時には、掌側板は基節骨掌側に固定されながら近位・遠位方向にスライドする動態構造を持ちます。
伸展位での固定が原則とされ、関節の安定性と可動性を両立させる重要な役割を果たします。

掌側板損傷の原因と臨床所見
主な原因はスポーツや転倒による過伸展外傷で、特に指が強く反ることで裂離骨折が生じやすくなります。
関節面の損傷が40%未満であれば、保存療法が選択されるケースが多いです。
臨床的には以下の症状が見られます。
圧痛
腫脹
可動域制限
画像診断(レントゲン、エコー)による評価が治療方針決定に不可欠です。
最新研究に基づく治療とリハビリテーション
保存療法では、専用の装具を用いて関節の過伸展を防止します。
2025年に発表された小児掌側板裂離骨折に関するシステマティックレビューによると、
関節面侵襲が30%未満の場合、保存療法で良好な予後が得られる。
30%以上や不安定例では、整復・内固定による手術治療が推奨される。
いずれの治療法も高い成功率が報告されています。
難治例・拘縮への対応
屈曲拘縮や難治性掌側板損傷では、以下の外科的手技が検討されます。
関節授動術
掌側板切離術
掌側板切離術では、一時的に関節の不安定性が生じるものの、瘢痕形成による再安定化が期待されるケースもあります。
まとめ:整形外科臨床への応用ポイント
PIP関節掌側板は、関節の安定性と可動性を両立させる重要な構造です。
保存療法が第一選択となり、装具選択は患者の生活スタイルに合わせて柔軟に対応することが重要です。
重症例や慢性例では手術治療が検討されますが、いずれも高い治療成功率が示されています。
整形外科臨床では、以下の点が予後改善の鍵となります。
損傷度と不安定性の正確な評価
早期治療の開始
適切なリハビリテーションの実施
このように、PIP関節掌側板損傷に対する理解と治療戦略は、最新研究により日々進化しています。整形外科医やリハビリ専門職にとって、エビデンスに基づいた対応が患者のQOL向上に直結する重要な要素となるでしょう。

