橈骨遠位端骨折(Distal Radius Fracture:DRF)は成人に最も多い骨折のひとつであり、特に高齢者や若年男性に多く発生します。近年、掌側ロッキングプレートを用いた観血的整復固定術(ORIF)が一般化し、術後リハビリのあり方が改めて注目されています。
しかし、術後に外固定を行うべきか、それとも早期リハビリを開始すべきかについては、長年議論が続いてきました。
2025年にオンライン先行公開された最新のメタアナリシス(Daherら)では、この疑問に対して高いエビデンスレベルで回答を示しています。本記事では、その内容をわかりやすく解説します。

早期リハビリ開始 vs 術後固定:最新メタアナリシスの結論
本メタアナリシスは、ランダム化比較試験(RCT)4件・計228例を対象に、以下の項目を比較しています。
合併症(再転位、腱障害、神経障害など)
再手術率
患者報告アウトカム(痛み、DASH)
可動域(屈曲伸展、前腕回内外)
結論として、以下の重要なポイントが明らかになりました。
1. 合併症・再手術率に差はない
即時可動群と固定群の間で、合併症発生率・再手術率に有意差は認められませんでした。
合併症:OR = 1.17(P = .70)
再手術:OR = 1.21(P = .70)
従来懸念されていた「早期可動による再転位リスク」は、RCTレベルでは裏付けられていません。
2. 痛みとDASHは3〜6か月で早期リハビリ開始が優位
短期(2〜6週)では差がありませんが、中期(3〜6か月)で即時可動群が明確に優位でした。
痛み(VAS)
6か月:即時可動群が有意に低い(SMD = −0.46, P = .005)
DASH(機能障害)
3か月:即時可動群が有意に低い(SMD = −0.45, P = .002)
6か月:即時可動群が有意に低い(SMD = −0.46, P = .005)
早期から動かすことで、拘縮や腫脹、瘢痕形成が軽減され、日常生活への復帰が早まることが示唆されます。
3. 可動域は6か月の前腕回内外で差が出る
可動域(ROM)は短期〜中期では差がありませんが、6か月時点の前腕回内外で即時可動群が優位でした。
前腕回内外:MD = 3.43(P = .004)
屈曲伸展では有意差はありませんでしたが、回内外の改善は機能面で大きなメリットとなります。
なぜ早期リハビリ開始が有利なのか?
掌側ロッキングプレートは固定力が高く、術直後からの可動に耐えられる構造です。 そのため、
関節拘縮の予防
腫脹・疼痛の軽減
早期のADL復帰
筋力低下の抑制
といった利点が得られます。
一方で、依然として多くの術者が術後固定を選択している背景には、固定力への不安や再転位への懸念が残っていることが指摘されています。
しかし今回のメタアナリシスは、早期リハビリ開始が安全であり、むしろ中期成績で優れることを明確に示しました。
臨床への示唆:早期リハビリ開始は新たな標準となるか
今回の結果は、掌側ロッキングプレートを用いたDRF ORIF後のリハビリにおいて、早期リハビリ開始が有力な選択肢であることを示しています。
もちろん、骨折型や患者背景による個別判断は必要ですが、 「固定は必須」という従来の考え方は見直されつつあります。
まとめ
即時可動は合併症・再手術率を増加させない
3〜6か月で痛み・DASHが改善
6か月で前腕回内外が優位
掌側ロッキングプレートの固定力により、早期可動は安全と考えられる
最新エビデンスに基づけば、DRF ORIF後は早期リハビリ開始が推奨される可能性が高いと言えます。
当院では「大阪市平野区の手外科」として手外科専門医と理学療法士が手術とリハビリを一貫して提供します。





